離婚一般

妻が熟年離婚を切り出す理由

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家裁調査官時代、未成年のお子さんのいる夫婦の離婚問題にかかわることが多く、熟年夫婦の離婚にはあまり縁がありませんでした。しかし、現在の仕事を始めてからは、いろいろな年代の方からご相談を受けることがあり、もちろん、熟年と呼ばれるような方々からもカウンセリングの申込みがあります。

最近は、夫から離婚を切り出す熟年離婚もあるそうですが、今のところ、弊社では、「離婚したい妻」と「それを察知して困っている夫」という相談パターンがオーソドックスです。

いつもご相談を受けていると、「仕方がないけど、残念だなあ」という気持ちになります。せっかくここまで夫婦としてやってきたのに、穏やかで幸せな老後を二人で共有できないからです。

しかし、妻にしてみれば、「穏やかで幸せな老後にするために離婚するのよ。」ということになります。

今回は、妻が熟年離婚を切り出す理由を考察します。是非、防止につなげていただければと思います。

   1 妻が定年退職した夫を嫌になる理由

1-1 夫が家事をしない

夫が定年退職でずっと家にいると、妻は三食準備する必要があり、家事が増えます。一人分も二人分も一緒だと思われるかもしれませんが、普段、専業主婦の平日のお昼なんて、昨晩の残りものだったり、納豆ご飯だったり、結構地味なものです。しかし、夫が一緒となれば、「また残りものか」なんて言われかねませんので、きちんと一食作らなければなりません。
炊事の他にも、洗う食器だって増えます。ことあるごとに「お茶入れてくれるか。」とか「コーヒーでも飲もうか(コーヒーを入れてくれということ)。」と言われ、家事を中断させられます。

一方、仕事のない夫は、家事をするでもなく、家でごろごろ、外をぶらぶら、です。妻の家事を手伝いたい気持ちもありますが、いまさらやり方が分からず、見ているしかできません。

こんなアンバランスな生活が長続きするはずはなく、妻は自分ばかりが家事に追われることを理不尽に感じるようになるのです。

ただ、それだけで離婚に至るわけではありません。

ほとんどの方が口にするのが、「感謝の言葉がない。」とか「やってもらって当たり前だと思っている。」という言葉です。

中には、最初は、「長い間、お仕事お疲れ様でした。」、「少しゆっくりしてね。」と優しい気持ちで夫の定年退職を迎えたけれど、日が経つにつれ、いつまでも「外で働く男と中で働く女」という役割分担から抜け出せない夫に嫌気がさしたという方もいました。

1-2 夫に趣味がない

仕事一筋だった男性は、定年退職後、「無趣味」に悩むことがあるようです。妻としても、「今度カルチャーセンターで中高年の英語講座やってるんだって。」とか「〇〇さんが入ってる囲碁サークルに行ってみたら?」などといろいろと声を掛けます。しかし、夫からは「そんなの興味ない」とか「カルチャーセンターなんて行ってられない。」といった返事が返ってくるようです。

無趣味そのものというより、何か新しいことに取り組んだり、興味を持とうとしない姿勢そのものが妻には不満なようです。

1-3 妻の家事に口出しする

これまで、妻が家事をしている時間帯に夫は不在でした。また、妻の家事に口出しするような時間もありませんでした。しかし、定年退職後は、時間がたっぷりあります。平日の日中、掃除機をかける妻に対して「そんなに雑に掃除機をかけたら埃が舞い散るじゃないか。」とか「ここにまだ髪の毛が落ちてますけど。」などと姑のようなことを言ったりします。

また、洗濯をする妻に対し、「そんな干し方じゃしわになるぞ。」とか「靴下は手洗いしてからじゃないと泥が落ちないぞ。」などとテレビで見知ったようなような正論を言ってきたりします。

妻としては、手伝いはしないくせに口だけ出してくる態度に腹が立ったり、いろいろと口出しされることに窮屈な感じを受けるようです。

1-4 家計に口出しする

これまで、平日の夕方の買い物といえば、妻の仕事でした。しかし、定年退職後の夫は、「散歩がてら」とか、「荷物持ちくらいにはなるだろう。」と一緒についてきます。一緒に買い物に行くこと自体は、楽しくほのぼのした時間なのですが、スーパーに入ってからの夫の言動がよくありません。

「こっちの野菜の方が断然安いじゃないか。」とか「おまえ、いつもこんな贅沢なもの買ってるのか。」とか「加工品はよくないぞ」などといろいろと口を出してきます。そして、レジでは、「一回の買い物でこの金額は買いすぎだろう。」とか「これじゃ家計が破たんするぞ。」などと言ってきます。

妻だって、少し手を抜いてお惣菜を買いたいときもあります。ちょっと贅沢なお菓子を買いたいときもあります。それを横でいちいちうるさく言われるとかなわないのです。

1-5 妻の用事に何でもついてくる

専業主婦はいろいろと忙しいものです。買い物の他にも、銀行や郵便局にいったり、友人とランチをしたり、趣味の講座に行ったり、町内会の集まりがあったり、出歩く機会が多いものです。妻としては、このおでかけの機会こそ、ずっと家にいる夫から解放される時間だったりするのですが、夫がそれについてくることがあります。

もちろん、妻だって夫と出掛けることが嫌なわけではありません。しかし、出掛ける支度をしていると、必ず雰囲気を察知し、「おい、どこか行くのか?おれも連れてけよ。」などといって毎回ついてこられては、息をつく暇もありません。

   2 妻が熟年離婚を決意する理由

いろいろと妻から語られる理由を書き出してみましたが、これだけのことで離婚に至るわけではなく、あくまできっかけや離婚の決意を後押しする要素に過ぎません。妻が熟年離婚を切り出すのにはもっと本質的な理由があるのです。

2-1 ずっと離婚したいと思っていた

みなさんが共通に口を揃えておっしゃるのが、「今まで我慢してきたのよ。」という言葉です。つまり、これまで、ずっといろいろなことで不満を抱いていたけれど、子どもが独立するまでは耐えようと離婚を我慢してきたのです。

そして、いろいろな不満とは、若い世代の離婚事由として聞かれることと大差はありません。女性問題、金銭問題、暴力、性格の不一致、モラハラなどです。

そんな貯まっていた我慢が、夫の定年後、先ほどのような行為により限界値に達し、離婚への思いを強めるようです。

2-2 不甲斐ない夫

「不甲斐ない」とか「だらしない」、「人が変わってしまったようだ」といった言葉もよく聞かれます。妻としては、いろいろな不満を持ちつつも、外の社会で戦う夫を尊敬していたりするものです。しかし、定年退職後、「もうそろそろ休憩も終わりでいいんじゃない。」と思われる時期になっても、何を勧めても「そんなものつまらないに決まっている。」と新しいことにチャレンジせず、妻にくっついてきては、いちいち文句を言う。そんな夫に不甲斐なさを感じるようです。

   3 卒婚ではなく離婚を選ぶ妻たちの心情

熟年離婚を望む妻たちが、今はやりの卒婚を選ばない理由がいくつかあります。

3-1 同じお墓に入りたくない

卒婚は、婚姻自体は継続されます。そのため、死後は夫と同じお墓に入ることになります。それが心情的に耐えられないという人もいます。

3-2 相手の介護をしたくない

卒婚といえども、相手が介護が必要な状態になれば、何かと手を煩わされることになります。施設を探したり、入所の手続をするだけでも大変だったりします。

3-3 相手との縁を切りたい

離婚理由が相手の借金である場合、離婚しなければ自分にも火の粉が降りかかってくる恐れがあります。また、とにかく相手から解放されたいとか、恋愛も自由に楽しみたいという場合は、卒婚ではなく離婚を選ぶようです。

3-3 熟年離婚する妻の苦悩

しかし、妻としても、喜び勇んで離婚するわけではありません。長年夫婦として培ってきた「情」があります。

また、妻だって、熟年離婚には、財産分与という面倒な問題も付きまといます。

そのため、できることならこのまま夫の嫌なところに目をつぶっていたいけれど、毎日が苦痛で仕方がない、ということでやむを得ず離婚を選ぶ人が多いようです。

   4 熟年離婚されないために

熟年離婚した男性の生活は「寂しい」の一言のようです。

まずは、食事です。食事を食べる相手に困るようになります。これまで、家族ぐるみの付き合いだと思っていた人も、よく考えてみれば、妻同士が仲がいいだけだったとか、あんなに毎日接待していたのに、定年退職したとたんに飲み友達がいなくなったという事態になります。毎日毎日、朝昼晩、朝昼晩、一人で食事をするのは結構つらいものです。

特に、食事が作れない男性は悲惨です。いくらお金があっても、毎日デパ地下の豪華グルメでは飽きてしまいます。ある人は、「高いお金を払ってもいいから、近所の主婦が作った家庭料理が食べたい。」とおっしゃっていました。

また、あまり子育てにかかわってこなかった代償は、子どもが独立してからも続きます。子どもが結婚し、孫ができたとしても、連れて帰ってくるのは妻の家です。時折り、申し訳程度に帰ってきてくれるけれど、手料理でもてなせるわけでもなく、孫と遊ぶのが上手なわけでもなく、「これでおもちゃでも買ってやりなさい」とお金を手渡すのが精いっぱいです。

さきほどから書いていますように、熟年離婚は熟年になってから原因が生まれるのではありません。多くの熟年離婚は、子育て世代、現役でバリバリ働いている世代からすでに序章が始まっていると言えます。

家事・育児を手伝ったり、妻をねぎらう言葉をかけるなど、「妻がいて当たり前」なのではなく、妻がいること、妻がしてくれることに感謝する気持ちが幸せな老後の秘訣なのではないでしょうか。

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