離婚一般

離婚における内容証明郵便の効果的な使い方

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今回は、あまりみなさんの生活に馴染みのない内容証明郵便についてです。内容証明郵便は、法的拘束力がありませんが、少ない労力と費用で目的を達成できる可能性を秘めています。是非使い方をマスターしてほしいと思います。

内容証明郵便とは

内容証明郵便とは

内容証明郵便は、差出した文書を郵便局が保管するサービスです。同じ文書を3通用意し、一通を郵便局が、残りを差出人と受取人がそれぞれ保管することになります。離婚の場合だけでなく、クーリングオフ関係や損害賠償請求など、何か重要な内容の文書を作成した場合に利用されます。大抵は、配達証明も一緒に利用しますので、「いつ、だれが、だれに、どんな内容」の手紙を出したのかが分かるようになっています。

内容証明のメリット

一番のメリットは、「いつ、だれが、だれに、どんな内容」の手紙を出したのかが残る点です。「言った、言わない」の水掛け論を防止することができます。

また、相手に対して、本気であることを示したり、プレッシャーを与えたりという心理的効果も期待できます。同じ内容であっても、LINEで「離婚してほしい」と言われるのと、内容証明郵便で「離婚してほしい」と書かれるのでは、受け止め方が違うことと思います。

内容証明郵便は、法的拘束力はありませんが、「放っておくと困ったことになる」という圧力を相手に与えることができます。そのため、相手が何を言っても知らんぷりを決め込んでいる場合や、無視されたりはぐらかされたりする場合は、内容証明郵便を活用することがお勧めです。

内容証明のデメリット

内容証明郵便は、書きようによっては、ソフトに書くこともできます。しかし、やはり、宣戦布告的な要素を完全になくすことはできません。そのため、相手を怒らせたくない場合や、穏便に済ませたい場合は向きません。

また、内容が残るというメリットは、裏を返せば、自分も証拠を握られるというデメリットでもあります。そのため、自分に不利になるようなことを書かないよう、注意が必要です。

例えば、慰謝料を請求する場合、任意にすぐ支払ってくれるなら100万円でいいけれど、裁判になるのであれば、弁護士費用等がかかるため、150万円は請求したいと考えているとします。この際、内容証明に100万円という金額のみを書いてしまうと、裁判で「最初は100万円と言っていたじゃないか。」という相手の主張の証拠として利用される危険性があります。このような場合は、「早期解決が望めるならば相場より安い〇〇円でいいが、調停や裁判になれば相場どおりのもっと高い金額を請求するぞ。」というニュアンスの一言を入れておく必要があります。

内容証明郵便を誰が作成するか

自分で作成

内容証明郵便は、自分で作成することも可能です。郵便自体は、どんな紙を使っても自由ですし、手書きでも構いません。ただ、文字数や行数、使っていい文字に制限がある点は注意が必要です。(詳しくは郵便局のHPをご覧ください。)

専門家に依頼して作成

内容証明郵便は、自分で作成することも可能ですが、その効果を最大限に引き出すため、専門家に依頼する人が多いようです。やはり、内容はもちろんのこと、専門家の名前が作成者として記載されているだけでも効果があるようです。では、だれに依頼するか、ということですが、専門家として弁護士と行政書士の二職種を紹介します。

弁護士に依頼して作成

内容証明郵便の送付だけでは問題解決が難しい場合があります。そんな場合で、かつ、弁護士に依頼することが予定されている場合は、あらかじめ内容証明郵便の作成についても弁護士にお願いするのがいいと思います。また、離婚問題の処理を弁護士に依頼した後、その弁護士が交渉の手段として内容証明郵便を使うこともあるでしょう。

行政書士ではなく弁護士に依頼するメリットは、相手との交渉が可能なため、紛争の最終的な解決が期待できるところです。デメリットは、同じ内容証明一通でも、行政書士に比べて費用が高いところです。

行政書士に依頼して作成

行政書士にも内容証明郵便の作成を依頼することができます。メリットは、多くの場合、弁護士より安い費用で専門家に作成を依頼できるところです。内容証明郵便自体は、法的に難しい手続や内容はありませんので、弁護士か行政書士か、というより、離婚の問題にどれだけ精通しているか、が納得のいく内容証明を作成してもらえるポイントになってきます。

デメリットは、相手との交渉ができない点です。例えば、内容証明に書かれている内容について、「慰謝料を100万円も支払えない。50万円にしてほしい。」などと相手から反応があったとしても、行政書士はあなたに代わって相手と交渉する権限がありません。そのため、内容証明を出した後のことは、自分でしなければいけません。

弊社でも、行政書士業務として、内容証明郵便の作成を行っています。多くの方は、「相手がすんなり応じるとは思えないけれど、今すぐ弁護士を依頼してまで解決するお金もニーズもない。とりあえず、相手に対して意思表示をしておきたい。」とか「相手の反応を見たい」という方が多いように思います。

離婚における内容証明郵便の効果的な使い方

別居に至った理由を伝える

夫婦には同居義務がありますので、勝手に家を出ていった場合などは、相手から「同居義務違反だ」と言われてしまいかねません。そのような場合を見越して、「〇〇の事情により」とか、「〇〇に耐えかねて」といったように、仕方なく別居に至った理由を記載しておくという方法があります。

離婚条件について

あなたが相手に離婚の意思を伝えたとします。しかし、相手も同じ気持ちで、前向きに離婚条件などについて話し合ってくれるとは限りません。多くの場合、「片方に婚姻継続の意思がない以上、もう片方ががんばったところで難しい」という判断のもと、離婚には渋々応じる素振りを見せるけれど、具体的な離婚条件についての話し合いには応じてくれないという状況に陥ります。

お互いが納得のいく離婚条件を作成するのは、そう簡単なことではありません。そのため、内容証明を一通送ったからといって、すべての問題が解決するということはあまり期待できません。しかし、あなたが望む離婚条件を明確な形で伝えることや、期限内にその条件について回答しなければ次のステップ(調停など)に進むことなどを相手に伝えることができます。

不貞相手に慰謝料を求めたい場合

配偶者の不貞相手に慰謝料を求めたい場合も内容証明を利用することができます。配偶者と違い、その不貞相手ともなれば、顔を合わせたり、話合ったりしたくないという人が多かったりします。また、腹を割って話し合うというより、やったことの責任の重大さを感じてもらいたいとか、その責任を取ってもらいたいという気持ちがあったりします。そのため、相手と協議をするというよりは、金額を明記して「突き付ける」という形を取る人が多いように思います。

弊社でも、慰謝料を請求する内容証明を依頼されることがありますが、相場より低い金額を設定した上で、「今払ってくれるならこれで収めるけれど、そうでなければ裁判で正当な金額を請求します。」というニュアンスを付け加えると、比較的支払い率が高いようです。

面会交流を求めたい場合

面会交流を求めたい場合も、意外と内容証明郵便が効果的です。というのも、離婚条件の中でも、金銭的なことに比べて面会交流の位置付けが低かったり、インパクトが少なかったりします。会いたい方の親にとっては、とても切実な問題なのですが、一緒に暮らしている方の親にとっては、子どもと会うことなど日常的なことでしかなく、緊急性が感じられないからです。そのため、内容証明にてどのように会いたいかとか、その返事をいつまでにもらいたい(返事がなければ調停を申し立てる)といったことを記載して、相手に本気度を伝えます。

確かに、面会交流の調停でも、「今になって会いたいと言われても困る。」、「いやいや、別居当初から会わせてくれと言い続けていた。」というようなやりとりがよく聞かれました。「会いたい」という気持ちがうまく伝わってなかったり、伝わっていたとしても「なかったこと」にされてしまった結果だと思います。そのようなことがないよう、明確な意思表示をしておきましょう。

養育費を求めたい場合

とにかく早く離婚したかったため、何も決めずに離婚してしまったという人がいます。また、最初は養育費なんてなくても何とかなると思っていたけど、事情が変わったということもあります。そのような場合、離婚後でも、内容証明郵便にて養育費を請求することができます。

養育費は、最終的には「算定表」という基準に則って決めていくことになります。また、決めるにあたって考慮しなければいけないことも比較的シンプルです。そのため、根拠を示した上で、選定表上の金額を請求すれば、調停をせずとも支払いにつながることが多いようです。

内容証明を受け取ったら

内容証明は送るだけではなく、もちろん、受け取る側になることだってあります。そのような場合は、まず、お近くの法律事務所がやっている無料相談に行かれることをお勧めします。内容証明を出すということは、「本気度を示したい」という意思表示でもあります。対応せずに放っておくと、調停になったり、裁判になってりして、問題が大きくなったり、長引いたりします。

内容証明を受け取った段階というのは、知らんぷりでやり過ごせる段階を超えたと考えた方がいいでしょう。しかし、書かれてあることそのままを鵜呑みするのも不安だと思いますので、まずは、専門家に相談するのが一番です。

まとめ

内容証明郵便は、法的拘束力がありません。しかし、使いようによっては、とても費用対効果が高いともいえます。例えば、養育費や面会交流といった離婚条件一つとっても、弁護士に依頼して調停を申し立てたとします。どんなに安くても50万円以上はかかります。しかし、内容証明郵便であれば、その十分の一で済みます。

内容証明郵便を効果的に使うポイントは、それを受け取った後の相手の行動を予測することです。知らんぷりされそうであれば、そうならないためにはどう書けばいいのか。内容証明を持って弁護士事務所に駆け込みそうであれば、そこで「この内容であれば、書いてある通りした方が無難ですよ。」と言ってもらえる内容にすると言った具合です。

内容証明郵便は、あまり知られていませんが、案外使い勝手がよかったりします。調停や裁判の一歩手前の手段として利用してみてください。

離婚テラスでも行政書士業務として内容証明郵便作成サービスを行っております。
ご興味のある方はこちらをご覧ください。

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