今日は、家庭裁判所調査官が離婚調停でどのような役割を果たしているのかについてお伝えしたいと思います。
離婚調停を申し立てたら、「調停委員の他にも誰かいたけど、一体何をする人?」、「家裁調査官が調査をすると言われたけれど、一体何をされるのか・・・」と疑問に思っている方の参考になれば幸いです。
1 家庭裁判所調査官とは
家庭裁判所調査官は、その名のとおり、家庭裁判所にだけ配置されている国家公務員の総合職です。
大きく分けて、少年事件(20歳未満の犯罪)と家事事件(離婚や養子縁組、相続など)の業務を担当します。
業務の内容としては、調査とその調査結果の裁判官に対する報告を主な仕事としています。
離婚調停での役割については、以下で詳しく見ていきたいと思います。
家裁調査官について詳しくお知りになりたい方はこちらも参考にしてください。
家庭裁判所調査官のお仕事
2 離婚調停の構成メンバー
離婚調停の基本についてはこちらをご覧ください。
離婚調停のメリット、お伝えします。
離婚調停のデメリット、お伝えします。
離婚調停の基本メンバーは調停委員2名(男女それぞれ1名ずつ)と担当の裁判官です。
この3人を「調停委員会」といいます。
それに加え、担当の書記官という人がいて、手続的なことや電話での連絡役を担っています。
調停期日外に裁判所に直接電話連絡をする際などは、この担当の書記官が窓口になります。
書記官は、「コートマネジャー」とも呼ばれる職種で、調停全体を把握していますので、何か問い合わせをする際は、担当の書記官名さえ覚えていれば何とかなります。
一方、家裁調査官は、この基本メンバーの中には入っていません。
特に必要が出てきたときにだけ、調停に出席したり、調停の期日間に当事者の方とお会いしたりします。
それでは、どんなときに家裁調査官が調停に入るのか、以下で見ていきたいと思います。
3 家裁調査官はどんな離婚調停に現れるか⁉
3-1 子どもがいる夫婦の離婚
未成年の子どもがいる夫婦の離婚では、親権や面会交流が問題になることが少なくありません。
そして、このような子どもに関する話題というのは、お金では割り切れないものです。
そのため、問題が紛糾しやすく、調停が長引く原因にもなります。
そんなときに家裁調査官が調停に出席したり、期日間に調査をすることになります。
3-2 当事者に特別なサポートが必要な場合
お子さんがいない夫婦の調停に出席することもまれにあります。
それは、夫婦のどちらか、もしくは双方に特別なサポートが必要な場合です。
例えば、酷いDV被害を受け、調停でなかなかスムーズな発言が難しい当事者がいた場合、サポートのために調停に立ち会ったりします。
また、当事者の性格の偏りが著しい場合などは、調停の進行補助のために立ち会うこともあります。
ただ、あくまでも例外的であり、家裁調査官がかかわる調停のほとんどは子どもがいる夫婦の離婚です。
4 家裁調査官は調停で何をする?!
では、家裁調査官は調停に出席して何をするのでしょうか。以下で見ていきましょう。
4-1 調査の準備
4-1-1 調査の要否に関する意見具申
家裁調査官はその名のとおり「調査」が主要業務の一つです。
そのため、進行中の離婚調停で調査の要否が検討されるような場面に立ち会い、調査の必要があるかどうか、また、どんな内容の調査が必要か、といったことを考えます。
もちろん、最終的に調査の命令を下すのは裁判官ですので、裁判官に意見具申するための立会ということになります。
4-1-2 当事者への説明
調査に対する当事者への説明や日程調整等も大切なお仕事です。
なぜなら、当事者の理解や賛同を得られない調査をしても、結果を有効活用できないことが多いからです。
そのため、どちらか一方でも調査に疑問を持っている場合は、丁寧に説明し、理解してもらえるよう努めます。
4-2 調査後の説明
調停と調停の期日の間に調査をした場合、その調査結果の報告や説明をするために調停に出席することもよくあります。
調査後、調査報告書という書面を当事者の方にも見てもらうのですが、如何せん「紙」です。
説明の足りない部分や疑問が残る部分もあると思いますので、当事者の質問に答えるのも大切な仕事です。
4-3 何となく立ち合い
調査の見極めのために立ち合ったものの、まだ調査の時期としては適していなかったということもあります。
ただ、今すぐにではなくても、将来的に調査が見込まれるような場合は、そのまま継続的に立ち会ったりします。
また、調査後の説明が終了した後も、何となく成立まで話をまとめるために立会していることもあります。
結局のところ、子どものことが問題になっている調停に一度足を踏み入れたら、最後まで立ち会っているというパターンが多いかもしれません。
5 家裁調査官の調査
家裁調査官の調査には、いろいろな種類があります。以下では、主なものをご紹介します。
5-1 子どもの気持ちを聞く調査
日本の文化では、長い間、親の離婚に関して子どもは「蚊帳の外」でした。
でも、両親が離婚する場合、実は、子どもにもいろいろな気持ちがあります。
争いに争い、にっちもさっちもいかなくなったときに子どもの意見を聞くのではなく、親が自分の主張をする前に、その参考として子どもの気持ちを聞いておく、くらいの認識でいたいものです。
ただ、当事者である親は、なかなか中立的な立場で子どもから気持ちを聞くことができません。
そんなときは、家裁調査官の出番です。
公正中立な立場のものとして、お子さんから気持ちを聞き出し、それを報告書にまとめます。
「家裁の調停まではしたくないけれど、子どもの気持ちをきちんと把握しておきたい!」という方はこちらをご参考ください。
子どもの調査活用例
5-2 監護状況の調査
監護状況というとちょっと堅苦しいですが、親御さんの「子どもの育てっぷり」を調査することもよくあります。
具体的には、当事者双方もしくは片方のご自宅にうかがい、家の中を見せてもらったり、その家の中で子どもがどのように過ごしているかを観察したりします。
また、通っている保育園や幼稚園の先生から話を聞くこともあります。
5-3 試行的面会交流
別居中か離婚後かにかかわらず、子どもと一緒に住んでいない方の親が子どもと会うことを「面会交流」といいます。
親が子どもと会うという、「当たり前」なことが難しいことがあり、家裁の事件としても急増しているのが現状です。
例えば、以下のようなことが同居している親から聞かれることがあります。
「長い間会っていないから子どもの反応が心配」
「連れ去れるのではないかと心配」
「別居親は子どもと遊んだ経験に乏しく、子の扱いが心配」
など、同居親なりにいろいろな心配があります。
そんな場合、「試しに家庭裁判所で会ってみましょう」というのが試行的面会交流です。
これも家裁調査官の大切な仕事のうちの一つです。
6 まとめ
多くの方にとって、家裁での離婚調停は初めての経験です。
また、中には、自ら望んでではなく、致し方なく調停に出席している方もおられることと思います。
不満や不安な気持ちもお察しします。
一方で、人生を左右する大切な場面でもあります。
疑問に思うこと、分からないこと、不満に思うこと、何でもいいので家裁調査官を頼ってみてください。