離婚一般

夫婦問題と教育虐待

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   1 教育虐待は教育か虐待か

1-1 教育虐待のはじまり

教育虐待という言葉はいつから使われるようになったのでしょうか。諸説あるようですが、2011年12月、「日本子ども虐待防止学会」において、「子どもの受忍限度を超えて勉強させるのは教育虐待になる。」との発表がされたのが始まりだと言われているようです。 しかし、このときに初めて教育虐待が発生したわけではなく、以前からあったものに名前が付けられたまでのことだと思います。ただ、少子化の影響で親が子どもにそそぐ力や財力が増えたこと、ゆとり教育の反動で社会全体が子どもへの熱心な教育に肯定的な雰囲気になったことが背景となり、行き過ぎた教育が増えてきたのも事実かもしれません。

1-2 「教育熱心」と「教育虐待」の違いは何か

「教育熱心な親」と言えば、みなさんどんな親を想像しますか?子どもの教育に関心が高く、子どもの能力開発・向上のために学習塾や習い事に通わせる親を想像しませんか。どちらかというと、肯定的なイメージだと思います。 一方、教育虐待は、虐待というくらいですから、当然にマイナスのイメージがあります。では、「教育熱心な親」と、「教育虐待の親」。何が違うのでしょうか。これまでに出会った教育虐待(と思われる)の態様を見ながら考えていきましょう。

①できないと暴言・暴力を振るう
親の求める勉強量をこなせなかったり、勉強が分からなかったりすると暴力を振るう。暴力を振るう際の決まり文句は、「できないお前が悪い。」

②できても褒めない
子どもがいい点数を取っても褒めない。少しの欠点を指摘し、「どうして100点が取れないの。」と怒ったり、「誰のおかげでいい点数が取れたと思うんだ。」と自分の手柄にする。

③子どもの楽しみを奪う
子どもが特別楽しみにしていた行事を勉強で奪う。たとえば、友達の家に泊まりに行く約束をしているのに、「テストの点数が悪かったんだから、追加で勉強しなさい。」と意地悪く勉強時間を増やしてお泊りに行かせない、等。

④常識を逸した勉強量
年齢に不相応な勉強時間を設定する。小学校1年生に毎晩7時から10時まで勉強させる等。

⑤子どもの特性を無視した要求
スポーツが大好きで座っているのが苦手な子に、サッカークラブを辞めさせて、週に5回塾に通わせたり、ADHD等の発達特徴がある子に何時間もイスに縛り付けて勉強させる等。

⑥子どものためだと言う
もしかしたらこれが一番の特徴かもしれません。教育虐待の親は「あなたのためにやってるのよ。」、「おまえの将来を思うからこそ厳しくするんだ。」などと言って、自分の言動を正当化し、さらには恩まで着せます。

1-3 教育虐待親の2つのパターン

①エリートタイプ
自分も正真正銘のエリートで、子どもにも同じことを要求する親
このタイプの親は、自分の学歴も高く、医者や教授といった社会的地位の高い仕事に就いています。これまで、自分自身が厳しく律した生活を送っており、「自分の子どもなんだから、これぐらいはできないとおかしい。」、「できて当たり前。」という感覚が強い親です。このタイプの親は、子どもの個性や能力を無視しがちで、自分の尺度で子どもを見ます。

②コンプレックスタイプ
社会的地位の高いグループに属しているけど、学歴は低い親です。 このタイプの親の特徴は、自分の学歴にコンプレックスがあり、子どもには同じ思いをさせたくないと考えていることです。学歴が低く、その学歴に応じた職業に就いた親は、周囲と自分を比べて自分を卑下したり、コンプレックスを感じる機会は少なくてすみます。しかし、学歴は大したことないものの、その後の努力で一流会社の上層部に食い込んだ人なんかは、高学歴者に囲まれ、出身大学の派閥や二流大学への偏見に苦しむことになります。こういった親の特徴は、自分の夢を託すような感じで子どもに勉強を強いるので、子どもとしては、「自分ができなかったことを子どもに求めないでほしい。」という気持ちを抱くようです。

   2 夫婦問題と教育虐待の関係

2-1 夫婦不和の原因となりうる教育虐待

離婚の現場で語られる夫婦不和の原因は、異性問題、金銭問題、暴力、性格の不一致等様々です。そして、教育方針の不一致も離婚理由の一つとして語られることがあります。教育方針の不一致は、どこの夫婦でも起こりえますし、単なるケンカで終わる程度の軽い不一致もあります。しかし、教育虐待にまで発展してしまうと、「このままこの親に子どもを任せるわけにはいかない。」ということになり、問題が大きくなりやすいのです。 また、一方では、夫婦不和になった後に、相手の親としての不適格性を指摘したいがために、後付けで教育虐待を指摘する人もいます。このパターンでは、同居中は特に問題視せず、相手に子どもの教育を任せていたくせに、裁判になると突然「前からひどいと思っていた。」と言い出したりします。

2-2 教育虐待を受けた子どもの声

教育虐待とも思われる厳しい教育を受けている子どもたちからよく聞かれるのは、「私が頑張るとママが喜ぶから」「いい点を取るとパパが満足してくれるから。」といった声です。こういう子どもたちは、自分のために自分の意思で勉強するという視点がありません。「お前のためだ」と言われ続けても、実感としては「親のため」だと感じているということだと思います。

また、親の希望通り頑張ったけれど、自分が望んだ結果ではないこと、自分には合っていないことを理由に挫折する子どももいます。例えば、頑張って私立中学に行ったはいいけれど、校風も合わず、勉強にもついていけず、ついにはメンタル不調を起こして中退するなんていうパターンもあります。メンタル不調は、子どものSOSであり、もう無理だという心の声なのです。

まだ幼いうちから、親に叩かれながら勉強している子どももいます。暴力が伴うと当たり前ながら恐怖心も増します。子どもたちは、そんな親の仕打ちに心のバランスを崩しながらも、「できない自分が悪いから」と自分を責めるのです。

一般的に、教育虐待を受けた子どもは、自己肯定感が低いと言われています。自己肯定感が低いと、何か被害を受けたときや、不当な扱いをされても、「どうせ自分はだめだから〇〇されても仕方がない。」という思考に陥りやすく、相手に怒れなくなります。ですので、いじめやDVの被害者になりやすいのです。

多かれ少なかれ、親が子どもに勉強をさせる際、「勉強が嫌いな子どもに無理やり勉強させる。」という側面が潜んでいます。ですので、子どもの意思に反するから即虐待というわけではありませんし、子どもに必要な勉強を促すのは親の義務でもあります。しかし、やり方が不適切であったり、やりすぎたりすると子どもの将来を潰しかねません。「こうしてやりたい。」、「こなってほしい。」という親心と共に、「子の子は何が得意で、何が好きなのか。」、「どんな特徴があって、どれだけの能力があるのか。」ということを客観的に考えられる冷静さが必要なのではないでしょうか。子育てをしていると、つい忘れてしまいがちですが、子どもは親の所有物ではなく、個性を持った一個人なのです。

 

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