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DVは病気か?そしてDVは治るのか?

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夫や妻からDVを受けている人のお悩みのひとつに「この人が暴力を振るうのは単なる性格の問題なのか、それとも心の病なのか」という問いがあります。

この問いの裏側には、「性格なら何ともできない。でも病気なら治るかも」という期待が隠されています。

このコラムでは、DVは病気なのか性格なのか、そしてDVを治すことはできるのかについてお伝えします。

暴力は病気か性格か

DVという暴力と精神的な問題

まず、暴力と精神的な病気との関係を考える上で、ある精神鑑定医の話を紹介します。

刑事事件の精神鑑定とは、犯罪者の犯罪行為時の精神状態を精神医学的に調べることです。なぜこのようなことをするのかというと、日本の法律には、責任能力のない人は罰さないという決まりがあるからです。

この責任能力と精神状態ですが、大きく分けると「心身喪失」と「心神耗弱」の二つに分類されます。心身喪失の場合、完全に責任能力が欠けており、無罪となります。心身耗弱は、責任能力が著しく限定されている状態であり、刑が軽減もしくは免除されます。

猟奇的な犯罪の際には、精神鑑定を行うことが多く、佐世保の高1女子殺人事件などが例として挙げられます。

ちなみに、「あいつを殺してやりたいけど、捕まりたくもない。よし、お酒をたくさん飲んで酔っ払おう。そうすれば、心神喪失で無罪だ。」なんていう場合はどうなるでしょう。ご想像のとおり、そんなに簡単に人殺しが無罪になったりはしません。 これは、「原因において自由な行為」という理論なのですが、心神喪失に陥った原因となる行為の際の精神状態を採用するのです。 つまり、お酒を飲もうと決めた時点の精神状態は正常なわけなので、その後、心神喪失の状態で殺人を犯したとしても無罪になることはありません。

そして、精神鑑定を行っているある医師は、「精神鑑定の依頼を受ける事件の大部分が暴力性を帯びたものである。」と述べています。

これは、言い換えると、「暴力事件は精神的に問題があると思われる被疑者が多い。」ということです。つまり、DVという暴力も精神的な問題が大いに関係しているかもしれない、と言えるのではないでしょうか。

暴力が病気によるものだと言える場合

 

先ほどは、暴力と精神的な問題について鑑定医の言葉を紹介しましたが、もちろん、すべての暴力が精神的な問題と関係しているわけではありません。

例えば、小学校の男子生徒が殴り合いのケンカをした、なんていう場合は、単なる「成長の過程のぶつかり合い」のようなものとして捉えることができます。

また、統合失調症の患者が幻覚や幻聴(「あいつはお前を殺そうとしている、やられる前にやってしまえ。」という幻聴が聞こえる等)の結果、隣人を殺した場合は、どうでしょうか。

幾分、病気による暴力のような感じがするかもしれません。しかし、よく考えると、「殺されるかもしれない。」という被害妄想と、実際に殺す行為は分けられるべきであり、妄想は病気によるかもしれませんが、実際に殺す行為は病気とは結びつきません。

一方、統合失調症の前駆的症状である殺人欲求はどうでしょうか。上述の鑑定医は、殺人欲求そのものが病気によるものであり、まさに病気による殺人と言えると指摘しています。 総合して考えると、病気による暴力であるといえる場合は、ごく限られていることが分かります。

DVと病気の関係

では、DVは精神的な病気とどのような関係があるのでしょうか。DVには、有形力の暴力が伴うDV、暴言や無視などを繰り返す精神的DV、経済的な締め付けを行う経済的DV、性的行為を強要する性的DVなどがありますが、いずれのDVも相手を支配したいという「暴力性」が潜んでいます。

そして、DV加害者には、自己愛性人格障害や境界性人格障害等の人格障害がある人が一定数いると言われています。そして、先ほどの鑑定医が暴力と精神的な問題の関係性の強さを指摘していることを併せて考えると、「病気」の定義を「人格障害」等の広い意味での精神疾患まで広げた場合、DVは病気によると言えることも多いでしょう。

DVは治るのか?

DVが単なる性格ではなく、人格障害などの精神的な問題と大きく関わっているとして、その問題を解決し、DVを治すことができるのでしょうか。

実は、世の中には、DVを治すための治療機関や団体がいくつかあります。家庭裁判所調査官時代、そういった団体の代表者の方から話を聞いたことがありますが、その方は次のように言っていました。

治るための条件
・自分の問題に気付いている
・治すための動機がある
・まじめに治療に取り組む

つまり、自分でも自分の暴力的な問題に気付いていて、配偶者から「このまま暴力が変わらないなら離婚したい。」と言い渡されており、危機感がある人が、まじめに治療やワークショップに通っている場合は、治る可能性があるということだと思います。

ただ、現実はそう甘くないとも思います。配偶者に言われて治療に足を運んでいるけれど、内心は自分の問題だと思っていない人もいます。また、治療では、自分の悪い部分にも目を向けなければならないため、途中で「ばかばかしい」と理由を付けて投げ出してしまう人もいるでしょう。

離婚の現場にいる者として思うのは、「DVはそう簡単には治らない。」ということです。

暴力の「支配-被支配」の側面

世間に散見される力関係

 

みなさんも一度くらいは耳にしたことがあると思いますが、フロイトという有名な心理学者がいました。フロイトは、あらゆる人間関係には「支配-被支配」の関係が含まれており、それは常に暴力の芽生えたりうると指摘しています。

例えば、学校における先生と生徒の関係で考えてみましょう。「指導する先生と指導を受ける生徒」という支配関係で暴力が芽生えると「体罰」になり、「モンスターペアレントが怖くて怒れない先生と、それをいいことに調子に乗っている生徒」という支配関係になると校内暴力になりえるわけです。

その他にも、友人同士でも「いじりキャラといじられキャラ」というゆるい支配関係から、「いじめ」に発展するほどの明確な支配関係もあるでしょう。

はたまた、上司と部下の関係も同じようなことが言え、確かに人間関係には支配関係がつきもののようにも思われます。

そして、夫婦間に生じた支配関係が暴力になったものがDVだということができます。

では、完全に対等な関係というのはないのでしょうか。たとえば、「僕とあいつはいつも仲良しで、対等な関係である。」という主張もありえそうです。これに関しても、おそらく厳密に言えば支配関係が成立しているのだと思います。

例えば、スポーツをしているときは得意な方が、食事をしている場合はご馳走してあげた方が、悩み相談をしているときは聞いてあげている方が若干強いでしょう。

ですので、健全な人間関係にも支配関係は存在するけれども、その支配関係は時と場合によって入れ替わり、またその支配の程度も強くないということが言えるのではないでしょうか。

DV被害者にならないための早期発見

DV被害者にならないためには、この「支配-被支配関係」に敏感になり、うまくコントロールする必要があります。

以前のブログでも次のように書いたことがあります。

『これまで見てきたDV被害者の方たちの多くは、婚姻前に既にDVのにおいが匂ってきているのに、それに気づかないふりをしたり、「結婚すれば変わってくれるかもしれない」、「でも好き」等色々な理由をつけて婚姻に至ってしまっています。 また、「結婚して同居するまで分からなかった。」というパターンもあるかと思いますが、こういった人たちも「結婚したからにはそうそう簡単に離婚はできない。」と婚姻生活を継続させる選択をしてしまいがちです。 しかし、DVのにおいは気のせいでも何でもなく、現実に自分の心身の健康を脅かす暴力に成長します。DVのにおいがしたら、鼻をつまむのではなく、嗅覚を鋭敏にして身の振り方を早期に決定しましょう。』

こういう人たちは、「支配-被支配」の関係が生じ、それが固定化もしくは暴力を生みかねないほど強くなっていることに薄々気づきながらも、様々な理由でその「支配ー被支配」関係を強化する生活を継続させてしまっているとも言い換えられます。

ですので、配偶者と自分との関係性をよく見つめ、「おかしいな。」と感じたら、改善を図る、それが無理ならいつでも関係を終了させる心の準備をしておくことが大切です。一度、学習的無力化の状態に陥ると、正常な判断や思考は難しくなり、逃げられなくなりますので、初期段階での対処が重要です。

参考までに、暴力について書いている他の記事も読んでみてください。

DV夫と協議する際の2大ポイント
逆DVの辛さと実際
虚偽DV、冤罪DVの実際
DVから逃げる―DVシェルターってどんなところ?-
DV加害者更生プログラムの実際-DVは治るのか-

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