離婚調停

これさえ読めば離婚調停のすべてがわかる -期日編ー

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今日は、前回に引き続き、離婚調停の実際について書いていきたいと思います。是非、前回の「これさえ読めば離婚調停のすべてがわかる―申立編―」をお読みになってから読み進めてください。

   1 調停の基本の「き」

1-1 どこで調停をするの?

まず、指定された日時に指定された場所に行きます。「期日通知書」という書類に書かれているはずです。たいていは、家庭裁判所の担当部署のそれぞれの待合室になるはずです。(申立人は申立人待合室、相手方は相手方待合室)。そして、調停委員に呼ばれて調停室に入室し、まずは、調停に関する説明を受けます。この際、申立人と相手方が同席で説明を受けることになりますが、顔を合わせるのが不安だと言えば別席で説明してくれます。同席以外にも、DVなどがある場合は、開始時間や待合室の階を変えるなど、絶対に相手に顔を会わせないようにしてくれますので、心配な人は家庭裁判所に言ってみましょう。

1-2 調停委員会とは

裁判官と男女2人の調停委員で組織されるのが調停委員会です(家裁調査官は調停委員ではありません。)。ただ、裁判官は、同時にいくつもの調停を担当していますので、毎回調停室の中にいるわけではありません。基本、いません。当事者と顔を合わせるのは成立や不成立調書を作る最後だけ、ということもままあることです。ただ、調停の内容は、逐一調停員から裁判官に報告されていますし、調停の途中に調停委員が裁判官に相談(評議といいます)する時間を設ける場合もあります。

1-3 調停委員ってどんな人?

年齢や職歴などさまざまな人が選任されています。地方はその土地の名士のような人が多く、東京や大阪などの大都市は、大企業を定年退職した人をはじめ、華麗なる職歴を誇る調停委員が多いように思います。東京などは、渉外事件も多いので、語学が堪能な方もたくさんいます。もちろん、華麗なる職歴を持っていたとしても、離婚調停の調停委員として優秀かどうかは別の話で、多くは、調停委員になってから研修等で知識を養っています。法律に関する研修、面接技法に関する研修など、研修の種類も様々なようです。ですので、昔のように、夫の浮気に悲しむ妻に対して、「まあ、これも男の甲斐性のうちだからね~。許してあげたら?」なんて発言をする調停委員はいません(いないはずです。)。

また、それぞれ得意分野がありますので、外国人の事件は語学が堪能な方に、財産が高額で分与でもめそうな場合は金融関係に明るい方に、精神的なサポートが必要そうな当事者には細やかな対応ができる方を、といった具合に割り当てを考えたりしているようです。調停委員の方々のお給料はとても安いです。「普通に天下りしたらもっと稼げるだろうに・・。」と思う人もたくさんいます。みなさん、それぞれ「お役に立ちたい」という志を持って務められているようです。

1-4 基本は交互

基本的には、それぞれ30分くらいずつ、調停委員から話を聞かれます。初回は、お互いの主張を聞いて、今後の調停の進行方針などを相談することが多いですが、前回書いたように「事情説明書」や「回答書」が充実した内容に仕上がっていると、調停委員の聞き取りがスムーズに進みます。調停委員は、双方から話を聞き、それを相手に伝えるというのが主な仕事ですが、その他にも、ある程度の説得や促しをしたり、裁判官が考える「調停案」を示したりもします。

   2 離婚調停の注意点

ここからが、弊社離婚テラス代表ならではの、「元家庭裁判所調査官の視点」でお伝えする「離婚調停の注意点」です。

2-1 各事件のバランスが大切!

多くの場合、離婚調停だけではなく、「婚姻費用(離婚するまでの生活費)」や「面会交流」といった他の案件も一緒に話合いをすることになると思います。一回の調停の中で複数の事件(家庭裁判所では「〇〇事件」という言い方をします。)が同時に協議されるイメージです。中には、係属しているのは離婚調停だけだけれど、その中で面会交流や養育費のことも話し合っていることもあるでしょう。そこで問題となるのが「時間配分」です。「何から話して何から解決していくか。」というのがとても大切になってきます。多くの場合、調停委員が配分について双方の合意を得ながら公平に進めていきますが、そうでない場合もあります。
特に注意が必要なのが「婚姻費用」、「面会交流」、「離婚」の3つの事件が係属している場合です。

夫 42歳 大手企業営業
妻 35歳 専業主婦
長女 2歳

夫は仕事が忙しく、子どもができても「平日は終電で帰宅、休日は昼過ぎまで寝ているか接待ゴルフ」という生活を変えられなかった。
妻は育児のストレスを買い物で解消。また、夫に対する愛情も薄れ、家事・育児を手伝ってくれないことへの不満を言動で表すようになっていった。
夫は、疲れて帰宅した後、連日のように妻から不平不満をぶちまけられ、帰宅拒否気味に。
ある日、夫は、カードの請求額が月額30万円近くに膨れ上がっていることを発見し、妻と大喧嘩。
夫は、子どもは可愛かったが、妻との生活にピリオドを打つべく別居。
しかし、専業主婦である妻は、生活への不安もあり、また夫への愛情もまだあったため、離婚協議を拒否。
そのため、夫は離婚調停を申し立てた。
また、妻は、「勝手に出て行ったんだから。」と子どもに会わせてくれないため、夫は「面会交流」も申立て。
一方、妻は、夫から入金される月額10万円では生活できないと「婚姻費用」を申し立てた。

こういうラインナップになった場合、往々にして「婚姻費用」が優先されます。
なぜなら、婚姻費用は妻や子どもの現在必要な生活費であり、死活問題だからです。
もちろん、そのとおりで、婚姻費用の問題を優先的に話し合わなければいけない場合も多いです。しかし、例示の夫婦のような場合に要注意なのは、婚姻費用を請求している方が離婚を望んでいないということです。この場合、次のような状況に陥る危険があります。

 婚姻費用→優先的に協議
面会交流→一応双方の主張を聞くが、協議に割かれる時間は少し
離婚→妻が応じないため「不成立」見込でほぼ進展なし

そして、妻は、婚姻費用が成立したとたん、調停に欠席がちになったり、面会交流の調停を引き延ばしたりしてきます。
「妻、ずるいなぁ。」と感じる方もおられるかもしれませんが、そもそも、調停なんてものは面倒で精神的にも疲弊する「できればやりたくないこと」です。ですので、自分のニーズがなくなれば、ペナルティーさえなければ非協力的になるのも当たり前なのです。

では、どのような進行が望ましいのでしょうか。できれば、次のように進行するのが理想だと思います。

①婚姻費用と面会交流を同時進行で協議
②離婚の協議に時間をかけれない分、財産分与や養育費算定のための経済資料の提出を先行

もちろん、離婚したくない妻は資料提出に応じないこともあるかと思いますが、裁判で離婚できる見込みがあるのであれば、どうせ裁判になったら提出しなければいけない資料だし、裁判より調停で話した方がよい、というニュアンスで伝えれば、特に妻に弁護士がついている場合、資料提出に応じてくれることが多いと思います。

ここで例示したのは一例で、絶対にこういう進行でなければいけないというものではありません。大切なのは、進行に注意し、調停委員に納得のいく説明を求めるということです。

これを読んでいる方の中には、例示の妻側の立場の方もおられると思います。裁判になっても離婚事由が認められなさそうな場合は、「離婚したくない。」という気持ちを貫くのも一つの方法だと思います。自分の気持ちに背く決定は心身の健康を害する要因にもなります。ですので、自分が納得できるまで離婚には応じないという姿勢を貫くのもいいと思います。ただ、既に別居が数年にもわたっていたり、離婚事由があって裁判になれば離婚は認められそうという場合は話は別です。詳しくは、離婚を切り出されたときに本当にやるべき3つのことをご覧ください。

2-2 大事なことは書面にして提出する

先ほども書きましたように、離婚調停は交互に調停室に入る形で進んでいきます。調停委員は、申立人から聞いたことを相手方に、相手方から聞いたことを申立人に伝える形で進行していきますが、どうしても「伝え漏れ」が出てきたりします。また、ニュアンスが違ってしまうということも起こります。また、調停委員は、メモ的なものを書いて、その日に話し合った内容を裁判官に伝えます。しかし、2,3時間かけて話し合った内容をA4一枚程度の紙にまとめるのは難しく、取り上げるべき話題の選択を誤ってしまったりします。ですので、主張書面を調停の変遷に従って「主張書面1」「主張書面2」「主張書面3」というふうに書面にして提出することをおすすめします。裁判所に提出する書面は、非開示希望を出さない限り、「相手にも同じものを渡すので2部用意してください。」と言われますので、相手にも主張内容がきちんと伝わります。

2-3 些末なことはできるだけ期日間に解決する

細かいことのやりとりは、できるだけ調停外で話し合ってしまいましょう。例えば、別居の際に持っていく家具のリストだとか、子どもの写真を持って出るのを忘れたので送ってほしいというような主張を調停でやり始めると、それだけで時間がかかってしまいます。代理人弁護士がいる場合は、期日間にFAXやメールなどでやりとりをしてもらえばいいですし、代理人弁護士がいなくても、当人同士でメールなどでやりとりをできるのが望ましいです。

2-4 調停案が示されたら・・

ある程度議論が尽くされたけれども、双方がまだ合意に至らないといった場合に「調停案」というものが示されることがあります。この調停案は裁判官が考える「ここが落としどころなんじゃない」という案です。言い換えれば、「このまま新しい主張がない場合、審判になったらこんな結果になるよ。」ということでもあります。そのため、調停案が示された場合、「ここが落としどころなんだな。」と察知し、そこで合意する方がいいと思います。やはり、「調停段階で自分で納得して合意した」という結果と「審判で裁判官に決められた。」という結果は大きく受け止めが違うと思いますので。

   3 まとめ

以上が調停の流れと注意点です。離婚調停が不成立となった場合、後は人事訴訟という裁判しか残されていません。裁判は、時間的にも経済的にも負担になります。是非、自分自身の決断で納得できる結論を出せるよう、離婚調停をうまく活用してください。

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