性格傾向と離婚

大人の発達障害でも幸せな婚姻生活を送るために

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夫婦不和とうつ病

子どもの発達障害は随分広く知られるようになりましたが、大人にも発達障害の人がいるのを知っていますか?

子どもの発達障害は、三分の一が思春期までに症状がなくなり、三分の一が成長に伴い社会生活に問題がなくなり、残る三分の一が大人になっても症状が残り、日常生活に困難を来たしている、と言われています。 今日は、そんな大人の発達障害と離婚について書きたいと思います。

大人の発達障害とは

まず一つには、子どもの発達障害でよくある症状の「多動」ですが、さすがに大人になると座っていられない人は少なくなり、かわりに「注意欠陥」が優位になってきます。 また、もう一つの特徴として、「片付けられない、忘れ物が多い」といった症状は、子どもであれば、ある程度許されることが多く、ある意味「子どもらしさ」ともとらえられます。しかし、大人になれば、「片付けられない、忘れ物が多い。」といった特徴は「大人らしさ」とは相反することになり、仕事をはじめ、社会的責任を負う大人としては、非難されることが多くなります。また、「金銭管理ができない」、「空気を読めない発言をしてしまう」、「家事全般が苦手」、「子育てが苦手」といった悩みを抱えることもあります。

大人の発達障害と生活上の困難

金銭問題

子どもの発達障害ではあまり問題にならないのですが、大人はある程度自由になるお金を持っているが故に、「金銭管理ができない」という課題を抱えることになります。 理由としては、「何かに夢中になるとはまってしまい、全部集めたくなる(コレクション好き)」、「計画的にお金を使うことが苦手で、ほしいものを後先を考えずに買ってしまう。」等の理由があります。 そうすると、知らない間にカードの利用額が支払能力を超えていたり、キャッシングをするまでに至っていたりして、離婚の最たる理由である「金銭問題」に発展するわけです。

空気の読めなさ

また、「空気を読めない発言」をしてしまうという特徴もあります。これも、子どもの発達障害にも当てはまる症状なのですが、子どもはそもそもTPOに合わせた会話に限界がありますから、ある程度許されます。しかし、大人ともなると、そのKYっぷりが際立ってきます。 例えば、配偶者の親が亡くなったとき、お悔やみを言うよりも先に「お義母さんは肺がんだったんですね。ガン家系ってことは〇〇(配偶者)は大丈夫でしょうか。」と言ってしまったり、障害のある子を持つママ友に対して「案外ちゃんと成長しててよかったね。」と言ったり。特徴としては、本人に悪気はないのだけれど、「言葉の選び方がそぐわない。」という印象を与えてしまうことです。 結婚すると、必然的に関係する人が増えます。配偶者の親族、子どもができればママ友や学校関係等、人間関係が複雑になっていきます。発達障害の人は、様々な場でKY発言を繰り返し、配偶者のメンツを潰したり、嫌な気持ちにさせてしまったりするので、夫婦不和に発展します。

家事一般が苦手

そして、一番みなさんも想像しやすいのが「家事ができない」という症状ではないでしょうか。特に、「片付けられない」という症状については、一時期よくメディアに取り上げられていたので、ご存じの方も多いと思います。 これは、「集中力が続かない。」、「そもそも物が多い。」、「片付けの段取りができない。」等の特徴によります。 特に、女性の場合は、片付けをはじめ家事一般を担っていることが多く、それができないと「怠けている」と非難されることになります。

子育てが苦手

子どもがいる場合も、問題を抱えやすくなります。育児とは、「根気、計画性、共感性、一貫した対応」等が求められますが、待つことが苦手で段取りができず、KY発言が多かったり、気まぐれだったりする発達障害の人には大変な困難が伴います。 子どもが学齢期に入ったとしても、子どもの持ち物点検や学校への必要な連絡をすることが困難で、自分が子どもの頃に通った道をまた再度通ることになります。そうすると、「子どもの世話もきちんとできないなんて。」と配偶者に不満を抱かれる原因になります。

仕事が続かない

発達障害の人は、ミスをしやすいため、仕事上の問題を抱えやすくなります。また、コミュニケーション能力も高くありませんので、社内外の人間関係を構築することが苦手です。そうすると、仕事にいってもミスをして上司に怒られてばっかり、愚痴を聞いてくれる同僚もいない、そもそも、飽きっぽいので同じ仕事を続けるのがしんどい、ということなりなり辞職率が高くなります。

発達障害が夫婦不和を招きやすい理由

発達障害が夫婦不和に陥る具体例

そんなこんなで生活上の問題を抱えやすくなるわけですが、夫婦関係がうまくいかないというパターンも多く見られます。

妻が発達障害のパターン

夫  45歳 エリートサラリーマン
妻  35歳 専業主婦
長女  5歳 幼稚園年長組

夫の主張:交際当時から、妻はおっちょこちょいだったり、世間知らずなところがあったけど、年齢が10離れていることもあり、「かわいいやつだなぁ。」ぐらいにしか思っていなかった。でも、結婚後、専業主婦の割に家事を怠けるところが見受けられ、それが原因でけんかをすることもあった。妻は、家事が苦手だと言っていたが、自分としては、家事なんて誰でもできることを苦手と言われても、怠けているようにしか思えなかった。

子どもができると、育児で手一杯になるようで、さらに家事を怠けるようになった。それでも、育児をちゃんとやっているならばと目をつぶっていたが、最近では、娘の幼稚園の準備も怠るようになってきて、また夫婦喧嘩が増えた。自分としては、娘が幼稚園で恥ずかしい思いをしないよう、持ち物の準備や行事への参加を徹底してほしいと思っているが、忘れ物が多かったり、時間を間違えて行事に参加できなかったりするようだ。

専業主婦なのに家事・育児をちゃんとしてくれない妻に愛想が尽き、自分が親権を取って離婚したいと考えているが、娘は妻に懐いており、悩んでいる。

 

夫が発達障害のパターン

夫 40歳 会社員
妻 40歳 会社員

妻の主張:夫とは結婚して2年になります。結婚適齢期を過ぎようとしている頃に出会いました。このチャンスを逃してはいけないと思い、交際して1年で結婚しました。今から考えると、当時から、夫は仕事が続かなかったり、歳の割には考え方が幼いと思うことがありました。でも、当事は、とにかく結婚したい気持ちが強かったのです。自分にもきちんとしたキャリアがあり、生活に困ることはないと思ったたし、何よりそんな頼りない夫が少しかわいいとさえ思っていました。

しかし、結婚してからの2年間で、夫は2回転職しました。無職だった期間もあります。私が疲れて帰ってくると、先に帰っている夫から仕事の愚痴を聞かされるのも嫌でした。夫の言っていることはとても子供っぽく、共感して聞くことはできませんでした。子どもがほしいという気持ちもありましたが、自分が産休・育休を取っている間、家計を支えてくれる人がいません。また、将来の生活にも不安があるため、結局、この年になるまで子どもを産めませんでした。私に何も与えてくれない夫とは、これ以上生活を共にしたくありません。

婚姻後に問題が顕在化する

発達障害は、結婚後に突然明らかになるものではありません。遡ってみると、交際時代から同じような状況が見られているはずです。しかし、先ほどの具体例でもあったように、交際当時は特に気にならなかったり、むしろかわいいと思っていた部分が、結婚するとそうは思えなくなってきたりするのです。

また、生活を共にすることで、発達障害による配偶者の「生活の下手さ」をより強く実感・体感することになります。また、自分がそれによって不利益を被ることも多くなってきます。婚姻生活が長くなり、愛情の形が変わってくることも理由の一つでしょう。

知的障害や身体的障害の場合、ある程度の覚悟や「それでも好き。」という気持ちで結婚に踏み切りますので、婚姻後、その障害が問題になってくることが少ないものです。一方、発達障害は、「障害」という名前はついていても、性格的な要素もあります。そのため、知的障害や身体的障害に比べて、婚姻時の気付きや覚悟に違いがあることも、婚姻後に夫婦不和を招く理由となります。

障害であり性格的特徴でもある

また、大人の発達障害は、周囲から見ると単なる性格的な問題として映ります。病気や障害に比べて、「うまく生活できない」ことへの理解が得られないことも、夫婦不和を招きやすい一因となります。

 発達障害でも幸せな婚姻生活を送るには

配偶者もしくは自分自身が発達障害であることへの理解が何よりも大切です。夫婦カウンセリングなどをしていて強く感じるのは、発達障害の人が感じているしんどさや「分かっているのにできない。」という気持ちを相手は理解できていないということです。「できるのにやらない。」と思っていると、相手の行動に腹が立つばかりです。

ですので、自分や相手が「発達障害かもしれない。」と思うことがあれば、すぐに専門の病院を受診することをおすすめします。これは、「発達障害」というレッテルを貼るためではなく、理解を深めたり、対処方法を教えてもらうためです。発達障害である本人も、「生活のしにくさ」「生きにくさ」には理由があったこと、自分が怠けているわけではなかったことなどを理解することができ、気持ちが楽になります。また、配偶者としても、理由がわかると見方が変わってきますし、対処方法も教えてもらえます。

例えば、先ほどの具体例のようなパターンだと、家事・育児のできない妻のために家事代行サービスを頼むことも選択肢として出てくるかもしれません。また、仕事が続かない夫には、思い切って主夫になってもらうという方法もあるかもしれません。

何でもかんでも「発達障害かもしれない。」と疑ってかかるのはよくありませんが、「もしかして」と思い当たることはあれば、受診してみることをお勧めします。

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