離婚一般

産後クライシスで離婚しないためにできること

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夫婦カウンセリング

今回のコラムでは、産後クライシスの仕組みやそれが原因で離婚しないための工夫をお伝えします。

産後クライシスで不仲になるメカニズム

離婚カウンセリングの際、「いつから夫婦仲が悪くなってきましたか」とお尋ねすると、「出産を機に夫婦関係が悪化した」というお声をよく聞きます。出産というおめでたいライフイベントであっても、それが原因で夫婦不和が始まるメカニズムの裏には、産後クライシスが隠れています。

産後クライシスとは

妻が出産した後、お互いへの愛情が冷めたように感じ、夫婦仲が悪くなってしまうことを産後クライシスといいます。

そして、産後クライシスを数字で見える化した調査として、ベネッセ教育総合研究所のHPで紹介されている調査結果を以下に紹介します。

産後クライシス(危機)で夫婦に何が起こる!?(クリックするとベネッセ教育総合研究所のHPに移動します。)

はじめての子どもを出産後の夫婦の愛情の変化

この表を見ると分かりますが、妻も夫も相手を愛していると感じる割合が如実に下がっています。特に妻の方で顕著になっており、妊娠期に比べて半分以下になっています。

産後クライシスの原因

ホルモンバランスの変化

授乳中は女性ホルモンが極端に減るなど、妊娠・出産により、女性のホルモンバランスは大きく変化します。そういったホルモンバランスの変化は体調だけではなく精神面にも大きく影響し、イライラしやすくなったり、不安感が強くなったりします。

育児に対する夫婦の考え方の違い・温度差

母親の妻とまだ父親になり切れない夫

妻は、お腹の中で赤ちゃんを育てていますが、夫はそうではありません。そのため、赤ちゃんが生まれたとしても、夫はすぐには父親の自覚が生まれないことがあります。妻からすれば、夫に親としての自覚がないように見えてしまったり、頼りなく感じてしまうことがあります。

育児レベルの違い

また、育児の方法についても、妻は産前から様々な準備をしたり、勉強をしますが、夫はそうではありません。特に、里帰り出産からの帰宅が長引くケースだと、産後から数か月してようやく夫のもとに子どもがやってくるケースもあります。

そうすると、妻は既に子育てのエキスパートですが、夫は素人です。妻は夫が何をしても文句を付けたくなりますし、そんな妻の態度に夫は益々育児をしなくなってしまいます。

夫婦間の温度差

妻は、子ども中心の生活になり、子どもが絶対的な存在のように感じられます。しかし、夫はそこまででもなかったりします。例えば、子どもが寝てから夫が仕事から帰宅したとしましょう。妻にしてみれば、寝ているわが子を起こさないよう、とにかく静かに帰ってきて、静かに過ごしてほしいと願います。一方、夫は、疲れて帰ってきたのだから、自分のことも尊重してほしい、そんな気持ちがあったりします。

夫婦間のコミュニケーション不足

子どもが生まれると、当たり前のように子ども中心の生活になります。これまでのように、夫婦ふたりでゆっくり語らったり、触れあったりする時間が減ってしまいます。

また、ホルモンバランスの変化のため、夫とのスキンシップに嫌になってしまう妻もいますし、妻にとっては何より子どもが第一です。

そんな生活の中で、夫は自分がないがしろにされたと感じたり、妻の愛情が冷めたように感じます。

夫の家事・育児の分担が少ない

男性の育休取得が少しずつ進んできてはいますが、多くの場合、出産から1年前後は妻が育休を取り、夫は外で働くことになります。

夫にしてみれば、妻は育児と家事、自分は働いて稼いでくることが役割分担のように感じたりします。

しかし、妻は昼も夜も平日も休日もずっと育児に追われています。睡眠時間もまとめて取れない場合がほとんどです。

そんな中、夫が育児に協力的でないと、夫への不満や不信感が募り、一生消えない傷になっていきます。

「異性」として見られなくなる(セックスレス)

妻の場合、授乳していることやホルモンバランスの関係もあり、夫といえども、触られるだけで嫌な気持ちになることがあります。また、夜も2,3時間おきに授乳が必要なため、単純に「疲れている」という理由で夜はそっと寝かしてほしいという人もいるでしょう。

また、夫は、妻を「女性」というよりは「母」としてしか見られなくなったりします。特に、出産に立ち会ったりすると、妻が成し遂げた偉業に感動する一方、妻の体を性的な対象というよりは、出産を成し遂げた母の体として認識するようになるようです。出産後も、授乳する妻を見て、妻の乳房は子どものためにあることを認識したり、伸びたままのおなかの皮や妊娠線、大きくなったままのお尻などに「妻」ではなく「母」を感じ取ってしまったりします。

産後クライシスから離婚に至ることもある

いくら産後クライシスで不仲になったとしても、子どもが生まれて幸せなはずの夫婦が離婚に至ることに疑問に思う人がいるかもしれません。

しかし、以下の統計を見ていただくと、産後クライシスが原因と思われる離婚がいかに多いかが分かります。

このグラフは、最高裁判所のHPに掲載されている司法統計をもとに作成したもので、子どもがいる夫婦の離婚のうち、その子どもの年齢を集計したものです。この円グラフを見れば、まだ子どもが幼いころに離婚する夫婦が大変多いということが分かります。出産をきっかけに夫婦不和が始まり、数年のうちに離婚に至るという経過を表しています。

もちろん、離婚の理由は産後クライシスばかりではありません。しかし、子どもを持つということが、ハッピーな側面ばかりではなく、心身ともにハードであること、それゆえ夫婦それぞれにストレスがかかること、そのストレスから潜在的だった夫婦間の問題が顕在化することなどが不仲の理由として考えられます。

産後クライシスで離婚しないためにできること

産後クライシスの存在を理解する

産後クライシスの存在を知っておくことが一番大切です。例えば、産後うつという病気があること、でも正しく対処すれば一定期間の後完治すること、産後はお互いに異性として見れなくなる時期があること、お互いの立場や生活が違ってくるため、お互いに不満を感じやすかったりすること、そういった「起こりがちな衝突」について理解しておけば、相手の言動にいたずらに心をかき乱されずにすみます。

また、「これは産後クライシスだな」と気付くことによって、事態が深刻化するまえに、改善への努力をすることも可能です。

夫が育児・家事をがんばる

産後クライシスは、夫の努力だけではなく、妻も含めて双方が互いに理解しあうことが必要です。しかし、体や生活が大きく変化するのは断然女性の方です。そのため、夫がより協力的になることが求められます。具体的には「家事・育児」の分担です。

東京ウィメンズプラザが運営するサイト「パパとママが描く未来手帳」にて掲載されている、東レの渥美由喜氏が実施した「女性の愛情曲線調査」の結果を以下に引用します。

パパの育児と愛情曲線?!(クリックすると、パパとママが描く未来手帳のページに移動します。)

図 女性の愛情曲線

これをみると、出産後、夫への愛情が回復しているグループと、低迷グループがあるのが分かります。そして、同サイトでは、回復グループには、「夫と二人で育児をした」と答えた人が多く、低迷グループでは「一人で育児をした」と答えた人が多かったそうです。

特に大切なのは、妻の子育てを手伝うという感覚ではなく、夫婦で分担するという感覚です。よく、妻が外で用事がある場合に夫が子どもの面倒を見ているケースがありますが、それはまさに手伝っているだけです。例えば、休日は土曜は妻が、日曜は夫が、という風に一日単位でお世話に役割を決めておくことがお勧めです。

離婚相談の中でも、産後から数年間の夫の育児不参加を離婚理由として挙げる妻がとても多いのが事実です。

妻ができることは「頼ること・任せること」

そうは言っても、夫ばかりが我慢したり、負担を負わされるのでは、やはり夫婦はうまくいきません。男性だって産後うつになることもありますし、仕事と家庭の板挟みになってうつになったり、働けなくなったりしてしまいます。そんな状況を避けるため、育児中の妻ができることは何があるでしょうか。

それは、誰かを頼ることです。例えば、子どもを実家やベビーシッターに預けるという方法があります。少しの時間でも、子どもと離れて過ごすことができれば、子ども以外のことを考えたり、夫や周囲の状況を客観的に見ることができるからです。

また、相談相手という第三者を持つことも有効です。女性健康支援センター(厚生省のHPに移動します)や市役所の子ども家庭課などの公共的な相談機関でもいいですし、精神科や心療内科を受診したり、夫婦問題カウンセラーに相談するのでもいいと思います。

また、せっかく夫が育児に参加したとしても、「そのやり方は違う」と夫にダメ出しを繰り返し、結局自分でやってしまう人もいます。それでは双方ともに嫌な気持ちになるだけですので、いったん任せたことには極力口出しをしないという約束も必要です。

まとめ

産後クライシスは誰にでも起こる可能性がります。そして、先にご紹介した女性の愛情曲線調査では、落ち込んだ愛情が夫の育児参加により回復していることが分かりますが、出産後数年間低迷した「低迷グループ」が上がってくることはありませんでした。

これは、その時期に失った信頼感はなかなか取り戻すことができないことを意味しています。

まずは、産後クライシスの存在を理解し、産後は夫婦が協力して子育てをする体制を作っていただければと思います。

当センターでは、夫婦関係に関するカウンセリングや、法的な内容も含む話合いの仲介(ADR)を行っています。おひとりで悩まず、ぜひご相談ください。

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