離婚一般

産後クライシスで離婚しないための工夫

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   1出産をきっかけとする夫婦不和の始まり

1-1 出産をきっかけとする夫婦不和

離婚カウンセリングの際、よく、「いつから夫婦仲が悪くなってきたか」という話題になります。夫婦不和の始まりやきっかけはみなさんそれぞれで、浮気や多額の借金が発覚したという劇的な理由から、徐々に性格の不一致が顕著になってきたり、嫁姑の確執が強くなってきたりといった「じんわり系」の理由まで様々です。

そんな中、よく聞かれる理由が「出産を機に夫婦関係が悪化した」という話です。出産なんていうおめでたいライフイベントであっても、夫婦不和という不幸の始まりになってしまうということです。そんな状況を産後クライシスと呼びます。確か、5年ほど前にNHKの番組で特集が組まれたのをきっかけに「産後クライシス」という言葉が世間に広まったように記憶しています。

1-2 数値が物語る産後クライシス

産後クライシスを物語っているのが下の円グラフです。このグラフは、最高裁判所のHPに掲載されている司法統計をもとに作成したもので、子どもがいる夫婦の離婚のうち、その子どもの年齢を集計したものです。この円グラフを見れば、まだ子どもが幼いころに離婚する夫婦が大変多いということが分かります。出産をきっかけに夫婦不和が始まり、数年のうちに離婚に至るという経過を表しています。

   2産後クライシスの理由

2-1 産後うつ

産後クライシスの理由の一つとして、「産後うつ」があります。女性は、出産後のホルモンバランスの変化や子育ての大変さから、「産後うつ」を発症することがあります。産後うつ自体はけして珍しいものではなく、10人に1人は産後うつや類似の症状を経験するとも言われています。

症状の軽重はそれぞれです。子育てに自信がもてなくなったり、すぐ涙が出てきてしまったり、「私は授乳するだけの価値しかないのかしら」と自己肯定感がなくなったりします。また、症状が重くなると、育児ができなくなり、育児放棄に似た状況になってしまったり、時には、子どもの生命に危険が及ぶようなこともあります。そのため、重症の場合、母子分離という治療方法が取られることが多く、子どもを妻の実家で預かったり、妻だけが実家に帰るなどの対処が必要になってきます。

産後うつは、適切に治療すれば、きちんと治ります。また、一旦母子分離をしたからといって、再統合ができないわけでもありません。しかし、夫婦ともに産後うつに対する知識がなかったり、受診を怠ったりすると、一時的な産後うつが、長きにわたって夫婦不和の原因となることがあります。

2-2 子どもに夢中になるあまり、夫を大切に思えなくなる

特に第一子出産後、子どもが何よりも大切になり、夫がどうでもよくなってしまうことがあります。例えば、子どもの服を洗濯しようとしている際、夫が自分の汚れ物を一緒に入れようとすると「汚いから別に洗って。」と言ってしまったり、帰宅後、子どもを抱っこしようとする夫に「汚いから抱かないで」と言ってしまったりします。

まだまだあります。例えば、子どもの離乳食作りに夢中になるあまり、夫の夕食を作らなかったり、夫の小遣いを減らしてまで子どもに幼児教育を受けさそせようとしたりします。幼児教育に限らず、夫の収入水準を無視して子どもにお金をかけようとする人もいます。

夫のことが大切に思えなくなると、必然的に夫との会話が減ったり、夫と一緒に過ごす時間が減っていきます。夫の不満もたまり、夫婦不和の原因になります

2-3 妻も夫もお互いを「異性」として見られなくなる

出産後、妻が夫婦生活を拒んだり、夫が妻を女性として見られなくなるという話を聞いたことがある人も多いことと思います。

女性の場合、授乳していることやホルモンバランスの関係もあり、夫といえども、触られるだけで嫌な気持ちになることがあります。また、夜も2,3時間おきに授乳が必要なため、単純に「疲れている」という理由で夜はそっと寝かしてほしいという人もいるでしょう。

また、男性も、妻を「女性」というよりは「母」としてしか見られなくなったりします。特に、出産に立ち会ったりすると、妻が成し遂げた偉業に感動する一方、妻の体を性的な対象というよりは、出産を成し遂げた母の体として認識するようになるようです。出産後も、授乳する妻を見て、妻の乳房は子どものためにあることを認識したり、伸びたままのおなかの皮や妊娠線、大きくなったままのお尻などに「妻」ではなく「母」を感じ取ってしまったりします。

2-4 お互いの生活リズムや生活の変化への無理解

妻に悪気がある訳ではありませんが、子ども中心の生活リズムになります。例えば、これまではどんなに遅くなっても夫の帰りを寝ずに待っていた妻が、子どもに添い寝しながら一緒に寝てしまったりします。そうすると、仕事に疲れた夫が夜遅くに帰宅すると、妻が迎えてくれないどころか、台所の食器は積みっぱなし、自分の夕食もどこに用意してあるのか分からない、といった状況に不満を感じてしまったりします。

また、夫の生活リズムが変化しないことに妻が不満を感じることもあります。夫としては、妻や子どもを養うために外で必死に働いているのに、妻からは「帰宅時間が遅い。」とか「子どものお風呂の時間に間に合わない。」と怒られてしまったりします。妻は、子どものことしか考えられず、夫の会社での立場や役割に思い至ることができないため、このような事態に陥ってしまいます。

   3産後クライシスを乗り切り、離婚を回避する方法

3-1 産後クライシスの存在を理解する

当たり前のことですが、産後クライシスというものを知っておくことが一番大切です。例えば、産後うつという病気があること、でも正しく対処すれば一定期間の後完治すること、産後はお互いに異性として見れなくなる時期があること、お互いの立場や生活が違ってくるため、お互いに不満を感じやすかったりすること、そういった「起こりがちな衝突」について理解しておけば、「ああ、例のあれね。」と落ち着いて対処することができます。

3-2 夫が妻を理解する

私自身が女性であるため、夫側に妻への理解を求めるわけではありませんが、やはり、男性に理解を求めたいところです。時折り、良好な夫婦関係の維持のためには、女性も産後すぐであっても身だしなみに気を付けようとか、ずっと自宅にいるだけでもちゃんと化粧をしよう、といったアドバイスをする人がいます。しかし、私はそうは思いません。出産後、育児を始めた女性に身だしなみや化粧を要求するのは女性の産後の体や精神状態を理解していないと言わざるを得ません。

また、男性が会社で大変な思いをして働いてくれていることも理解できます。ただ、男性の生活には変化があまりありません。これまでと変わらず、頑張って働いてくれているということです。一方、妻は大きな変化を強いられ、人生で初めての出来事を一気に経験します。そのストレスは男性の比ではありません。

これらのことを考慮すると、男性が少し譲歩してくれたり、理解を示してくれたりすると夫婦の関係が少し和らぐのではないかと思います。具体的には、妻の家事・育児を手伝ったり、妻の「けんけん」した態度を見て見ぬふりしてあげたり、育児や家事に対する感謝の気持ちを口にするといった基本的なことで構わないと思います。

3-3 妻ができること

そうは言っても、夫ばかりが我慢したり、負担を負わされるのでは、やはり夫婦はうまくいきません。男性だって産後うつになることもありますし、仕事と家庭の板挟みになってうつになったり、働けなくなったりしてしまいます。そんな状況を避けるため、育児中の妻ができることは何があるでしょうか。

それは、誰かを頼ることです。例えば、子どもを実家やベビーシッターに預けるという方法があります。少しの時間でも、子どもと離れて過ごすことができれば、産後うつの症状も出にくくなりますし、子ども以外のことを考えたり、夫や周囲の状況を客観的に見ることができるからです。

また、相談相手という第三者を持つことも有効です。女性健康支援センター(厚生省がやっています)や市役所の子ども家庭課などの公共的な相談機関でもいいですし、心療内科を受診したり、夫婦問題カウンセラーに相談するのでもいいと思います。自分の負担を減らし、できた余裕を夫のために使うことができれば、夫の不満も軽減するはずです。

   4 まとめ

産後クライシスはどこの夫婦にも起こり得ます。それだけ出産・育児は心身共に負担なことなのだと思います。しかし、同時に幸せに満ち溢れたことでもあります。是非、産後クライシスの存在を知り、乗り切ってほしいと思います。

離婚テラスでは、離婚カウンセリングのほか、夫婦カウンセリングもお受けしています。夫婦のお悩みがある方は是非カウンセリングをご検討ください。

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