離婚一般

境界性パーソナリティ障害(BPD)と夫婦関係

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今日は境界性パーソナリティー障害(BPT)と夫婦の問題について考えてみたいと思います。

   1 境界性パーソナリティー障害(BPD)とは

境界性パーソナリティ障害(BPD)は比較的新しい病気(昔はなかったということではなく、比較的最近に精神障害として分類されたということです。)で、1900年初頭にロールシャッハという心理学者が発見しました。1980年に今のBPDという名前でDSM-Ⅲ(「精神障害の分類と診断の手引き第三版」。精神障害を診断する際のバイブルみたいなものです。)に掲載され、現在に至ります。
この境界性パーソナリティ障害(BPD)は「ボーダー」とも呼ばれていますが、なぜそのように呼ばれるようになったのでしょうか。それは、神経症と精神病の境にある病気という意味合いからです。つまり、精神病まではいかないけれど、神経症よりは重い感じがするということです。

現在の診断基準では、以下9項目のうち5つ以上を満たすとBPDと診断されることになります。

1 現実に、または想像の中で見捨てられることを避けようとする気も狂わんばかりの努力(注:5の自殺行為または自傷行為は含めないこと )
2 理想化と脱価値化との両極端を揺れ動くことによって特徴づけられる不安定で激しい対人関係様式
3 同一性障害:著明で持続的な不安定な自己像や自己観
4 自己を傷つける可能性のある衝動性で、少なくとも2つの領域にわたるもの(例:浪費、性行為、物質濫用、無謀な運転、むちゃ食い)
5 自殺の行為、そぶり、脅し、または自傷行為のくり返し
6 顕著な気分反応性による感情不安定性(例:通常は2~3時間持続し、2~3日以上持続することはまれな強い気分変調、いらいら、または不安)
7 慢性的な空虚感
8 不適切で激しい怒り、または怒りの制御の困難(例:しばしばかんしゃくを起こす、いつも怒っている、取っ組み合いのけんかをくり返す)
9 一過性のストレス関連性の妄想様観念、または重篤な解離性症状

発症の原因は遺伝的要因と環境要因によるとされていますが、まだ解明されていないことも多いようです。遺伝的要素を持った人が幼児期に虐待を受け、親と安定的な関係を築けなかったりした結果、20代になってBPDを発症する、ということもあるようです。

   2 境界性パーソナリティー障害(BPD)と夫婦関係

2-1 境界性パーソナリティー障害(BPD)夫婦が離婚に至る典型例

BPDは20台の女性に多い病気です(ですので、ここからは妻がBPDという前提です)。そのため、結婚してから突然BPDを発症した、というよりは、「今思えば交際当時から何となく傾向があったような・・。」というパターンの方が多いのではないでしょうか。しかし、交際当時は恋愛の真っ只中ですから、「感情の起伏が激しい=自分の言動で一喜一憂してるみたいでかわいい。」、「依存心が強い=頼られているようで嬉しい。」とった具合にいい方に捉えられがちです。また、BPDは自傷行為も症状の一つですから、「別れたら死ぬ」というようなことを言われ、自分が何とかしなければならないと責任感で結婚することもあるかもしれません。

もちろん、配偶者がBPDでも幸せな結婚生活を送っておられる方も大勢おられると思いますし、信頼できる相手との交際や結婚を機に症状が安定してくることもあるようです。しかし、恋愛感情が一段落し、生活を共にする中で、BPDを配偶者にもつ夫は疲弊していきます。夫から聞かれるのは、「妻の性格がとにかく激しく、時には暴力も伴うため、もう一緒には暮らしていけない。」という主張です。

例えば、「妻が用事があるというので、気を利かせたつもりで子どもを連れて自分の実家に遊びに行ったら、妻が怒り狂って電話してきた。家に帰ってみると、妻が玄関で包丁を持って立っていた。」とか、 「高校時代の友人(同性)と飲みに行くと言ったら、すごい剣幕でおまえはホモかと罵られた。飲んでいる最中に何度も電話してきて、空き巣に入られたと嘘をついてまで自分を帰宅させようとした。」とか、 「最近金遣いが荒くなってきたように思ったので、家計がどうなっているか教えてほしいと言ったら、おまえの給料が低いから困ってるのにえらそうに言うなとキレられた。挙句の果てには、会社にまで給料を上げろと電話された。」等々です。BPD夫婦のエピソードの特徴は、「ちょっとしたことで突然にキレた。」、「キレ方が半端ない。」、「キレる理由とキレる程度が理解を超えている。」、「被害が多方面に拡大した。」、「自傷他害行為に及んだ。」という内容が多いことです。そして、夫は日常的に妻の感情の起伏や攻撃にさらされるわけですから、へとへとに疲れ切っていたり、限界まで我慢しすぎて鬱っぽくなってしまったりします。警察や救急車を呼んだ経験を持つ人も少なくないでしょう。

2-2 夫の選択

そして疲れ切った夫は妻との関係を見つめなおすようになります。もし、夫が妻がBPDであることを知らず、単に言動のみを取り上げて結論を出すのであれば、「こんなやつとはやっていけない。別れてやる!」ということで迷いなく離婚を決断できると思います。しかし、何らかの事情で妻がBPDであることを夫が知っている場合、特に病院等で説明を受けた場合、離婚という結論を簡単に出せなくなります。病院では、「言動を責めても、その人を責めないように。」とか、「『ここにいてもいい』という安心感を与えるのが大切。」とか「激しい攻撃は試し行為であり、その背景には『見捨てないで』という強い願望がある。」等と言われるからです。こんな風に言われてしまうと、夫である自分が妻を見捨てるわけにはいかないと思ったり、悪いのは妻ではなく病気だと結論付けたりします。しかし、日々の生活が心身に大きな負担としてのしかかり、「婚姻継続か、離婚か」で悩むことになります。

2-3 BPDの妻に寄り添うことに・・

自傷他害行為がなかったり、症状がそれほどひどくない場合は、離婚ではなく婚姻継続を選択する人も多くいます。特にお子さんがいる場合、そのような結論に至ることが多いように思います。というのも、まだまだ現在の日本は母親が中心となって子どもの世話をしていますので、仕事で忙しい父親が親権者となるのが難しいからです。BPDの妻と子どもを二人きりにするくらいなら、自分がそばで支えた方が・・・ということになります。BPDの治療は薬物療法や心理療法などを行いますが、長期戦になることが多いと言われています。また、そもそも妻に病識がなく、治療を拒まれることも多いでしょう。
ただ、年齢と共に症状が落ち着く例も多く、40代、50代になるころには自然治癒、といったこともあるようです。確かに、BPDは本人自身にパワーがないと成り立たないような気もします。また、最近は弁証法的行動療法(DBT)という治療法が注目されています。これは、感情コントロールを学んでいくことを中心とした治療法で、これまで難しいとされていたBPDの治療で効果を上げています。
このように、BPDの予後はいろんなパターンが考えられます。絶望的でもないし、必ず希望があるわけでもない。このような分からなさが寄り添う人の大変さなのかもしれません。

2-4 離婚を決意したとしても・・・

仮に離婚を決断したとしても、残念ながら、円満に離婚に至る確率は高くないように思います。というのも、BPDである妻は、「自らを反省をして身を引く」ということをしませんので、まず協議離婚は難しいことが多いと思われるからです。その次のステップということで家庭裁判所の調停に進んでも、妻は一方的に感情をぶちまけるだけで、解決するための議論になっていきません。また、経験値的に感じているのは、BPDの人はドタキャンが多いということです。体調不良を訴えてのキャンセルが多いのですが、感情の起伏が激しく、戦闘モードでいきいきと協議の場にやってくることもあるのですが、自分自身がその起伏に疲れてしまったり、突然無関心モードになったりするからかもしれません。
お互いに弁護士を依頼し、冷静に話し合おうとしても、相手がBPDだとそう簡単にはいきません。BPDの人は、自分の味方である弁護士とも関係がうまくとれず、最初の弁護士を辞めさせて、また新しい弁護士を依頼したり、という動きをすることがあります。自分としては、弁護士を完全な見方として認識しているわけですが、弁護士も無理難題を聞くことはできませんし、勝てない裁判を勝てるとは言えません。そうすると、「裏切られた、捨てられた。」ということになり、これまでの味方が一気に敵に変わります。また、弁護士側の事情としても、BPDの激しい感情表現についていけず、時には事務所に押しかけて長時間居座られたりして、自ら辞任するパターンもあるかと思います。こういった弁護士の辞任・再委任もまた協議頓挫の一因になります。

   3 まとめ

離婚を選択するのか、治療に寄り添うのか、他人がアドバイスできることではありません。しかし、境界性パーソナリティー障害(BPD)の人は、とにかく「激しい」のが特徴です。ですので、愛し合って結婚したとしても、一緒にいると本当に疲れます。離婚するにしても、婚姻を継続するにしても、まずは自分の心身の健康が一番です。特に、心の健康が大切です。そして、心の健康を保つには、専門家である精神科医やカウンセラーを頼るのもいいですが、それが少しハードルが高いと思うかたは、「BPD 離婚」などと検索してみてください。困難を乗り越えて婚姻生活を継続させている人、紆余曲折を経て離婚した人、数多くの経験談に触れることができると思います。参考になる意見が見つかるかもしれませんし、「自分だけではないんだ。」という慰めになるかもしれません。まずは、できることことから始めてみましょう。

離婚テラスでは、夫婦問題カウンセリングも行っております。ご興味のある方はご相談ください。

 

 

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