ADR調停

弁護士に依頼せず協議離婚を進める方法

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る
再婚家庭と面会交流

離婚には、大きく分けて協議離婚、調停離婚、裁判離婚の3つがあります(審判離婚というのもありますが、ごく少数ですので割愛します。)

そして、その割合は概ね以下のとおりとなっています。

  • 協議離婚:90%
  • 調停離婚:9%
  • 裁判離婚:1%

圧倒的に協議離婚の割合が高いことが分かると思います。やはり、精神的負担、金銭的負担、紛争の程度、長期化の懸念、手続きの煩雑さ、こういったことを考慮すると、なるべくならあまりもめずに早期に協議離婚を成立させたいと考えるのが一般的だと言えます。

ただ、協議離婚といっても、財産分与や養育費など、決めておかなければいけない離婚条件があるのですが、夫婦間で離婚協議をするのは難しい、だかといって弁護士費用は高く支払えない、といった悩みを抱えることになります。

このコラムでは、そういったお悩みを抱えた方に、弁護士に依頼せず円満に協議離婚を成立するための方法としてADRという制度をご紹介します。

離婚条件の話し合い方

離婚すると決めたなら、次に待っているのが離婚条件です。慰謝料の有無やその金額、財産分与、年金分割、お子さんがいれば養育費や面会交流など、離婚に付随する様々な条件を決めていかなければならないのです。そういった離婚条件をどのように決めるか、その方法の選択によって、あなたの離婚の行方は八割方決まってしまうといってもいいかもしれません。

夫婦だけでの話合い

まずは、夫婦2人で話し合うのが一番の基本です。離婚やそれに付随する離婚条件は、究極にプライベートな話題ですので、やはり、当事者同士で話し合うのが解決の近道だったりします。

しかし、以下のような事情がある場合、夫婦だけでは話合いが円滑に進まないことがあります。

夫婦の力関係が極端に偏っている

夫婦間にモラハラやDVがある場合、一方の力が極端に強いため、話合いを持つことは困難です。また、モラハラやDVがなかったとしても、どちらかがとても口下手で、言いたいことが言えなかったりすると、相手に一方的に押し切られてしまい、後になって後悔することになりかねません。

夫婦の力関係は、普段の生活や会話から十分に予測することが可能です。

「いつも言いたいことが言えない」、「すぐに相手の顔色をうかがってしまう」という人は、夫婦のみでの離婚協議は避けた方がいいでしょう。

夫婦の意見が大きく食い違う場合

離婚するかしないか、離婚するとして、諸条件はどうするか、離婚には決めなければいけないことがたくさんあります。しかし、夫婦の意見が大きく食い違うことが予想されるとき、夫婦のみでの話合いは意味をなさないことがあります。

例えば、一方が離婚したい、もう一方が離婚はしたくないと考えているとします。そんな場合、いくら夫婦で話合いをもっても平行線です。

妻:離婚したいんだけど。。。
夫:俺は絶対その気はないよ
妻:。。。。。

こんな会話になってしまいます。

実は、こんな場合でも、問題解決のため、話合いを前に進める方法はたくさんあります。しかし、当事者二人でそれをするのは、かなり難しいと思います。

離婚に関する知識がない場合

離婚条件の一つである財産分与や慰謝料、お子さんのいる場合の養育費といった「お金」の問題を解決するには、ある程度の法律の知識が必要です。

例えば、財産分与について、「独身時代の貯金は分与対象にならない」とか、「基本は半分ずつ」といったことを知らない場合、どういうことが起こるでしょうか。

独身時代の財産も含めて今ある財産を全て半分ずつ分けてほしいと過剰な要求をされるかもしれません。また、「お前は家で家事しかしていないのだから、俺の稼いだ金は渡さん!」と言われてしまうかもしれません。

大切なのは、自分や相手の要求が「正当」なのか「おかしい」のかを判断する知識を持っているということです。そうでなければ、意見が食い違った場合、次のステップに進んでいくことができなくなります。

親族を入れての話合い

両親やきょうだいに仲介してもらって、離婚協議を進めるご夫婦もいます。しかし、実は、あまりお勧めではありません。その理由を以下にご紹介します。

公平でない

親族が話合いの仲介に向かない一番の理由は、公平な見方が難しい点です。所詮、身内です。どうやったって自分の子どもをかばいたくなるのが親心です。そんな親心があだとなり、円満に話し合えるものも円満でなくなります。

専門的な知識がない

親族は、お互いの気持ちを引き出したり、代弁したりすることはできるかもしれませんが、法的知識に裏付けられたアドバイスをすることはできません。

浮気をした夫側の両親が「子どももいることだし、今回だけは目をつぶってやってよ。私たちがきつく叱っておくから。」なんてことを言う場面もあるかもしれません。しかし、やり直すにあたって、もう浮気をしないと約束する、もし再度浮気をしたら今度こそ離婚に同意する、その場合の慰謝料はいくら払う、という内容の公正証書を作成できることやその法的性格について説明できるわけではありません。

親族の仲介の裏付けは「情」であり、法的知識ではないとう点に注意が必要です。

心配をかける

当たり前のことですが、夫婦の両親は夫婦より高齢です。子どもも独立し、たまに遊びにくる孫の成長を楽しみにするような、そんな穏やかな両親の生活を考えると、夫婦の離婚話の仲介をお願いするというのは、酷な感じがします。

実際、「親には心配をかけたくない。」という理由で、両親に夫婦不和の報告をいつするのかお悩みの方も多いのではないでしょうか。ご両親には、穏やかな形で結果報告するくらいがちょうどいいのです。

共通の友人を入れた話合い

共通の知人に仲介してもらうのも、親族に仲介してもらうのと同じような理由で好ましくありません。そもそも、自分の意見を持たずに話合いを仲介するのは、意外と難しかったりします。どうしたって「離婚した方がいいのでは」、「いや、離婚しない方がいいのでは」というアドバイスをしたくなります。

大切なのは、離婚したらこうなる、しなければこうなる、という様々な場合分けを提示しつつ、当事者の気持ちの整理を手伝うという作業です。けして、仲介者自身の意見を言うことではありません。

弁護士に依頼する

離婚協議といえば、弁護士を思い浮かべる人も多いことと思います。しかし、以下のような理由で、依頼に適していないことがあります。

対立構造になる

弁護士の仕事は相手と交渉をすることです。そして、例外もありますが、弁護士に依頼すると対立構造がはっきりとしてきます。そのため、「穏やかな解決」が難しくなります。

また、弁護士の報酬は、着手金や基本的な料金のほかに「成功報酬」が含まれますので、弁護士の基本姿勢として「できるだけたくさんのお金をとる」もしくは、「できるだけ依頼者が支払うお金を少なくする」という方針があります。

しかし、この方針には、依頼者と相手方がかつては愛し合い、何年も生活を共にした夫婦であること、または、夫婦の間に子どもがおり、今後も何らかの関係を続けていかなければならないことに対する配慮はありません。

そのため、自分はあまり求めていないのに「慰謝料もしっかり請求しましょう」とアドバイスされたり、子どものためなら多少多めに養育費を支払ってもいいと考えていても「それは支払いすぎです」と止められたりすることもあります。

その結果、相手を怒らせてしまったり、穏やかな話合いの雰囲気がなくなってしまい、対立構造が明確になってしまうことがあります。

お金がかかる

初回の相談を無料で受けてくれる弁護士はたくさんいますが、正式な依頼なく相手との交渉や仲介をしてくれる弁護士は皆無です。仲介や交渉をしてもらうには、着手金が必要です。

着手金の金額は事務所によって異なりますが、20~40万円程度はかかります。また、その後、最終的には成功報酬等も含めて100万円前後の支払いが必要になるでしょう。

中には、弁護士費用を支払ったら、分与できる財産が大きく目減りする人もいるでしょうし、弁護士費用の分、養育費に上乗せした方が円満に解決できるということもあるでしょう。

例外

しかし、中には最初から弁護士への依頼が適している人もいます。例えば、相手との対立が既に著しく、最初から裁判を見込んでいる場合は、早期解決のためにも、最初から弁護士に依頼するのがいいでしょう。

また、資産家の方やある程度の規模の会社を経営されている方なども、金銭面の取り決めを間違いなく行うためにも、弁護士に依頼し、ビジネスライクに話を進めてもらった方が解決への近道かもしれません。

ADR調停(民間調停)

今日は、先に紹介した協議の方法とは別の方法として「ADR」という民間の調停制度を紹介したいと思います。

ADR調停のメリット

利便性が高い

平日夜間や土日も話合いが可能

家裁で調停をするとなると、平日の日中ですが、多くのADR機関は平日の夜や休日も調停が可能です。夫婦のどちらかもしくは双方が仕事をしていると思いますので、平日の日中に限らないというのは大きなメリットといえます。

オンライン調停が可能

家裁でもオンラインによる調停が少しずつ進んではいますが、多くは対面での調停です。しかし、ADRによる調停は、オンライン調停が可能な機関が増えています。当センターでは、現在、約9割がオンライン調停です。

オンライン調停は、遠方でも利用が可能であること、自宅から参加できるので移動の時間がいらず、隙間時間で参加できることなど、多くのメリットがあります。

手続きが簡便

裁判所の調停の場合、申立時に戸籍謄本が必要であったり、申立書の他にも様々な書類を求められます。しかし、ADRでは、申立てのハードルを下げるため、ごく簡単な手続きで済む機関が増えています。

早期解決が期待できる

家裁の離婚調停は、いくら結論を急ぎたくても、次回期日が入るのは1か月以上先になります。一方、ADR調停であれば、都合されよければ、1週間後に次回調停を予定することもできます。

その結果、家裁の離婚調停は解決まで1年かかったというようなことが珍しくありませんが、ADRの平均審議期間は約3か月と短くなっています。

離婚協議は心身ともに疲弊しますので、早期解決できるにこしたことはありません。

調停委員のレベルが高い

意外に思われるかもしれませんが、家裁の調停委員の多くは法律や心理の専門家ではありません。一般企業を退職された方や教育にかかわっておられた方など、様々なバックグランドをもった調停委員がいます。もちろん、ある一定の研修を受けてから調停委員として活動するわけですが、みなさんが思うほどの専門性はありません。

そのため、当事者の話を聞かずに自分ばかり話している人、曖昧な法的知識で当事者を説得しようとする人、自分の基準で判断する人、いろいろな調停委員がいます。

この点、ADR調停の場合、調停委員は弁護士をはじめ法的知識も十分な専門家が担当しますので、安心して利用することができます。

納得度が高い

利便性や費用面が注目されやすいADRですが、一番のメリットは、納得度の高い話合いができるという点です。理性的な話合いの場で、双方が互いに気持ちを伝え合い、目の前の問題を解決していく、そんな協議が可能だからです。

ADR調停のデメリット

お金がかかる

弁護士に依頼せず、自分ひとりで調停を申し立てた場合、費用としてかかるのは申立費用数千円です。家裁の調停は、都度利用料はありませんので、1回で不成立になろうが、調停を2年続けようが、費用に変わりはありません。

しかし、ADR調停の場合は、多くは期日1回ごとに1万円前後の費用がかかりますので、家裁の調停に比べれば、お金がかかります。

ただ、この点については、家裁の離婚調停となれば弁護士に依頼する人も少なくありませんし、自分はひとりで乗り切るつもりでも、相手に弁護士がついた場合、やむを得ず自分も弁護士を付けざるを得ないことがよくあります。

そのため、家裁の本人調停に比べると、ADRの方が費用が掛かりますが、弁護士に依頼することを考えると負担が少ないといえます。

強制力(法的・心理的)が弱い

裁判所の手続きに比べて、相手に与える強制力はいろいろな意味でADRの方が弱かったりします。

例えば、養育費や面会交流などは、家裁調停の場合は不成立になれば審判という手続きに移行します。しかし、ADRは相手が応じてくれなかったり、不成立で終了すれば、それ以上手続きを進めることはできません。

また、心理的にも、裁判所から連絡がくるのと、民間の仲裁機関から連絡が来るのとでは、必然的に与える印象が異なってきます。

ADR調停に適している人

夫婦の一方が離婚に合意していない 

夫婦の一方が離婚に合意しておらず、離婚条件の話合いがなかなか進まないことがあります。例えば、双方ともに不貞などの有責性がなく、でも、妻がもう婚姻生活に限界を感じているとします。

妻が離婚を切り出しても、その気のない夫は、「離婚する必要はないと思っている」などと言い、話合いにはのってこないでしょう。妻が何とか我慢できればいいですが、そうでない場合、まともな話合いもないままに、突然別居の日がやってくることになります。そうなれば、夫としても、突然の別居に戸惑うでしょうし、子どもがいればなおさら「連れ去り」という問題にも発展しかねません。

また、話合いが進まないまま、妻のメンタルに限界がきてしまい、うつ病や適応障害になってしまうかもしれません。

ADR調停は、離婚の方向で話が進むとは限りません。一方が離婚に応じられない場合、当面別居という形で成立させることもあります。きちんと話合い、ルールを決めた上での別居をするのは、離婚したくない夫にとってもメリットがありますので、こんな場合はADR調停がお勧めです。

夫婦での協議が困難

夫婦ともに離婚に合意しているけれど、離婚条件の話合いが二人ではできそうにないことがあります。

たとえば、DVまではいかないけれど、相手を目の前にすると、なかなか言いたいことが言えない、ということがあります。また、ついついけんか腰になってしまって、理性的に話ができないご夫婦もいるでしょう。そんな場合、公平・中立な立場の専門家が仲介するADR調停が最適です。

離婚知識が乏しい

例えば、離婚にも合意しているし、離婚条件を公正証書に残すことも同意している。でも、どのような離婚条件を話し合うべきか、その項目すら分からないという場合があります。

そんな場合は、ADR調停を利用し、専門家の意見も聞きつつ、夫婦それぞれの希望も言い合いながら、公正証書にて定めるべき項目やその内容を話し合うことができます。

相手には弁護士がついているが、自分は依頼したくない

よくあるのが、出ていった配偶者の代理人と名乗る弁護士からある日突然連絡が来て、「今後は、全て当職を通すようにしてください。」などと言われ、いきなり対立構造に巻き込まれることがあります。

ただ、そんな場合でも、弁護士に依頼する経済的余裕がないとか、弁護士に依頼してまで紛争性を高めたくないということがあります。

そんな場合、まさにADR調停がお勧めです。法的知識の豊富な調停者が公平・中立の立場から夫婦の話合いのお手伝いをします。

ADR調停に向かない人 

紛争性の高い夫婦

既に夫婦間の葛藤が高く、最初から裁判が見込まれる場合、ADR調停は単なる時間の無駄となるかもしれません。そのため、最初から家裁の調停を申し立てる方がいいでしょう。

譲歩の余地がない人

離婚条件について、まったく話合いの余地がない場合、やはりADR調停は向かないかもしれません。中には、お互いが譲歩しつつ、妥当な線で合意することを望む人もいれば、どんな結果に終わろと、とにかく最後まで戦い抜くということを目標にしている人もいます。

「最後まで戦う」という姿勢は、実はあまり合理的ではありません。ただ、離婚問題は、理性で解決できるものではなく、結果として不利になったとしても、「最後まで戦い抜く」という姿勢を貫くことでしか前に進めない人もいるのです。

相手がADR調停に応じる理由がない

夫婦の両方がADR調停での解決を望んでいる場合もまれにありますが、ほとんどは、一方のみが希望していて、何らかの理由で相手も渋々応じているという状況です。

家裁の離婚調停もそうですが、申立人はもちろん調停を望んでいるわけですが、申し立てられた相手方は、自分から申立てをしていないという時点で、調停にニーズはないのです。

ただ、「家裁からの呼び出しに応じなかったら不利になるんじゃないか。」とか、「生活費を止められたら困るから渋々応じた」とか、「見て見ぬ振りをしてきたけど、もうそろそろはっきりさせないと」など、何らかの理由があって応じてくれるのです。

そのため、相手に何にも応じる理由がない場合、一方がADR調停を希望しても、相手方の欠席という結果で終わってしまったりします。

まとめ

ADR調停という言葉を始めて耳にした人も大勢おられることと思います。しかし、「知らない」で済ますには、あまりにもったいないメリットがたくさんです。

今回は、離婚や離婚条件を前提に書きましたが、他にも話し合えることがたくさんあります。

例えば、一方が浮気をした場合があります。夫婦関係を修復するのか、修復するとして、どんなことを約束するのか、約束を破った場合はどんなペナルティを課すのか、といったようなことを話し合い、最終的に公正証書を作成することもできます。

あまり堅苦しく考えず、夫婦の話合いを専門的な知識を持って公正・中立に仲介してくれる機関という程度の気軽さで利用してもらえればと思います。

当センターのADR調停の詳細については以下をご覧ください。

ADRによる調停(仲裁・仲介)

    お名前必須
    メールアドレス必須
    お問い合わせ内容必須
    カウンセリングされる方
    カウンセリングの方法
    カウンセリングの方法
    カウンセラー
    カウンセリングのコース
    カウンセリングのコース
    カウンセリングのコース
    カウンセリングのコース
    カウンセリングのコース
    ※お電話による「個別カウンセリング」は、代表小泉のみ受付しております。
    カウンセリングのコース
    カウンセリングのコース
    カウンセリングのコース
    カウンセリングのコース
    ※「夫婦カウンセリング」は対面、zoomのみ受付しております。
    希望日時希望日時の候補を3つご記入ください。なお、代表小泉は平日10時~16時及び土曜日10時~12時の間でご予約が可能です。増井カウンセラーは平日及び土日の10時~22時の間でご予約が可能です。
    相談内容
    ヒアリングの方法
    ヒアリングの希望日時平日及び土日の10時~20時でご予約が可能です。ただし、平日18時以降及び土日はご予約が混みあうことが多いため、お急ぎの方は平日日中の時間帯も候補日に入れていただけますようお願いします。
    ADRの申立ては以下のURLをクリックの上、申立てフォームの入力をお願いいたします。
    https://rikon-terrace.com/petition/

    なお、ADR実施について、相手方様の同意を取れていない等、進行についてご不安がある場合は事前のカウンセリングをお勧めしております。カウンセリングは、本問い合わせフォームの「カウンセリングの申込」よりお進みください。ADRの制度に関するご質問は、以下にご記入ください。
    ADRの制度上に関するご質問
    お問い合わせ内容

    • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • LINEで送る